ラウぺ

スリー・ビルボードのラウぺのレビュー・感想・評価

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)
4.4
一見地味そうなネタに見えるこの映画は予想外のインパクトを受ける怪作。
町の人々は普通に暮らしているただの田舎者ですが、それぞれに偏見や独自のものの見方を持ちながらも、それぞれのコミュニティや友人を大切にしている様子。ところが看板が立ったことで、思わぬ変化が訪れます。最初はごく些細な出来事だったものが、水面に石を投げ入れたときのように波紋が徐々に広がり、波紋の交差したところで予想外の変化が起きたりと、脚本の妙味に舌を巻くことになります。
登場人物達の印象は見はじめた当初からはどんどん変わっていき、先の読めない展開から目が離せなくなるのと同時に、いろいろなものが沸き起こってきて、それぞれに親近感を覚えてくるのが不思議です。
ともするとシリアスな展開になりそうなところも、そこはかとなく漂うシニカルな笑いが適度な距離感をもって描かれているので、独特の浮遊感に浸りながら映画に没入していけるのです。
主演のフランシス・マクドーマンドは何を言われようと決してブレない強烈な意思を持つ女性を怪演しており、警察署長役のウディ・ハレルソンの圧巻の存在感、マザコンで頭の悪い警官役のサム・ロックウェルなど、出演者がみな個性的な役を好演していて見飽きません。

群像劇としてのアンサンブルの妙味、一筋縄ではいかないストーリー、一言では決められない多面的な人物像、3枚の看板に隠された暗喩、じわっとくる余韻・・・これは繰り返し何度も観たくなる映画だと思います。
繰り返し観たくなる映画というのは実はそれほど多くなくて、大抵そういう映画は傑作なのですが、いや、これは間違いなく傑作だと断言しておきます。
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