ラウぺ

セブン・シスターズのラウぺのレビュー・感想・評価

セブン・シスターズ(2017年製作の映画)
3.9
地元の映画館で上映がなかった?ようで、公開時にはノーマークでしたが、これはなかなかの傑作。

近未来の世界、食糧難を解決すべく遺伝子組み換え作物で食料の増産を試みるも、その副作用として多胎妊娠が激増。欧州連邦は一人以上の子供を禁止し、二人目以降は「児童分配局」によって「クライオスリープ」と呼ばれる冷凍睡眠で保存されることになった。7つ子を産んだ後死亡した母親の代わりに祖父が密かに7つ子を引き取り育てる決意をする。姉妹はそれぞれ曜日の名前をつけられ、その曜日だけ外出して「カレン・セットマン」として一人の人生を演じていた・・・

産児制限を描いたディストピア映画では古くは『赤ちゃんよ永遠に』なんて怪作(子供は一人も許されず、産んだことがバレると広場にヘリで運ばれた半月状のドームの中で窒息死させられる)もありましたが、こちらは主人公を7人姉妹とし、その全てをノオミ・ラパスが演じているところがキモ。
それぞれの曜日に外出したあとは全員で外の世界の情報を共有するためのミーティングを行い、翌日外出する姉妹に齟齬がないようにする徹底ぶりですが、30年も経つとそれぞれ人格が形成され、外の世界での「カレン・セットマン」のパーソナリティとは乖離が生まれてきています。
あるとき月曜が夜になっても帰宅せず、火曜がその消息を追うことになりますが、引き継ぎのミーティングが行われていないことから、火曜は前日の月曜の行動を知らない。秘密を握っていることを仄めかす会社の同僚や、敵の不意の襲撃などが起き、その過程でそれぞれの曜日のパーソナリティの違いが浮き彫りとなっていきます。

謎が少しずつ解き明かされていく過程に並行して挿入されるかなり激しいアクションシーンは物語を起伏あるものとしつつ多層な見せ場を用意していて飽きさせません。
突っ込みどころは確かにいろいろあるのですが、それを考えさせる余裕を与えずに物語が進行していく展開は、設定の弱いところを充分に心得た上で脚本を練っていると感じます。
物語の方向は『ソイレント・グリーン』的な結末を予想しながらも当初の想像よりもかなりシビアな展開を覚悟しなければなりませんが、ありがちな物語を最後まで引っ張る牽引力は特筆に値すると思いました。

原題は“What Happened to Monday?”で、なんとも直截的で捻りのない邦題と比べてなかなか気の効いた題名だと思いますが、最後まで観終わってみると原題に込められた意味の多重性になるほどと唸らざるを得ないのでした。
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