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ワンダーウーマン 1984のはるのレビュー・感想・評価

ワンダーウーマン 1984(2020年製作の映画)
4.2
1年越しの公開になった今作だけど、やはりこの時期が相応しい内容だった。DCEUの9作目ということで、ワンダーウーマンとしては『ジャスティス・リーグ』以来。JLは微妙な出来だったが、今作は満を持してパティ・ジェンキンスによる正統な続編になるので期待しかない。
ジェンキンスは原案・脚本にも参加していて前作よりも彼女の作家性が反映されていると言えるし、そこは観ていて伺えた。視点の違いや優先順位がダイアナの行動に現れていたと思うし、そこはザック・スナイダーには絶対にタッチ出来ないものだ笑。
84年という舞台設定は「西側社会と文明の高み」をジェンキンスが見出したから、らしいが実際のところ現代にも響くものになっていたと思う。

さてネタバレ。
原題の略称が「WW84」ということで、ダブルミーニングにもなったか。世界が選択したのは‥ということだが正しいものになった。
まずはアバンの競技会で軽く感動してしまう。前作でも幼少期のダイアナを演じていたリリー・アスペルが、制作年そのままに大きくなって登場していたことも良かったが、淀みなく多彩なアクションが描かれて、それが女性だけで行われているこの描写は今作でしか成立しないだろう。個人的に身体性のあるアクションが好きだということもあるし、コニー・ニールセンの配役に合わせたような『グラディエーター』を彷彿させるものになってグッとくる。
ここでダイアナは余所見をして失敗してしまうが、これは伏線になっている。

クリステン・ウィグの配役がハマったバーバラ(チーター)は、いかにも80年代なコメディエンヌぶりで可笑しいのだが、そこからの変化の振り幅が物語に芯を与えている。そしてスティーブは可愛げのある(女性目線で)魅力的なオトコとなったが、あのややクドいお着替えシークエンスは「あえてやってる」わけで、「なるほど『プラダを着た悪魔』を観た女性はこんな心持ちになるのか」と感じることができた。もちろん現場は盛り上がっているはずで、それはダイアナの心情なのだ。
今作でややこしいのは、懐かしい80年代の風俗に驚く、さらに遠い過去から「未来」に来たスティーブの存在だろう笑。そのくだりをしっかりめに描く辺りもあえてのことだろうし、やや冗長になっても描くことを選択している。

ダイアナは目の前のスティーブに夢中になり、周囲やバーバラに対して関心を失う。対話を欠いたダイアナは知らない内にバーバラを傷つけていたのだ。三つ子の…ではないが、自己の願望に固執して余所見をしてしまうダイアナの性質が今でも残っていると示されている。
だから、使命に目覚めた後で、チーターに対してもあくまで対話で解決しようとし、マックス・ロードにはとうとう対話によって事態を収集するという選択をしたことに感動する。

今作でのワンダーウーマンは空を飛べるようになって、その描写も意外なほどに長く描かれた。ただその行為にはスティーブへの想いがあるのだし、ダイアナの成長の過程をあのように見せようとするジェンキンスの判断が良かったなと思う。
次作はクレオパトラの物語が予定されていて、ガル・ガドットとのタッグを継続するという。どうなるのか楽しみだ。
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