Melko

顔たち、ところどころのMelkoのレビュー・感想・評価

顔たち、ところどころ(2017年製作の映画)
3.9
アートとは、人に喜ばれてこそ
と思う。
人に不安や不快感を与えたり、考えさせる問題定義のようなアートは肌に合わない。
なので、近頃また地下鉄で話題になってるバンクシーにもわたしは否定的。

労働賛歌×アートという感じの映画。

草間彌生チックなおばあちゃん アニエスヴェルダと
飄々とした様子で絶対サングラスを外さないJR
50歳以上の歳の差を超える2人の友情とアート道中。
フランス語特有?の言葉の抑揚のなさで、途中ちょっと眠くもなったけど、おばあちゃんと孫にも見える、歯に衣着せぬ2人の言葉の応酬にクスッとする
自然豊かな田園、歴史を感じる建物等各地を巡りながらのアート活動
色彩豊かなフランスの土地と、モノクロな彼らのアートの対比が印象的。
そして被写体は、
工場労働者、カフェの店員、湾岸職員の妻たち、酪農家、郵便配達員など、働く人々にスポットを当てているのも特徴。
特に印象的だったのは、
湾岸コンテナ職員の妻たちの写真を完成した記念に妻たちをコンテナの上に座らせる場面。座った後
「わたしはいつも夫の後ろにいる」と控えめだった妻がコンテナの上では「自由になったみたい!」と清々しそうで、
「ストを批判する人のことはわからない」と言ってた強気な妻はコンテナの上では「高いところと、一人でいるのがこわい」と怯えていたところ。

建設中に未完成のまま捨てられた家々に、人を集め写真で飾ってパーティーする場面もグッときたなあ。

裸、人間そのまま ということにこだわるアニエスが、JRのサングラスを外させようとする
写真は家族の歴史
顔が人生を語る 生きてきた証 だから彼らの写真は顔がメイン。
ずっと残る物ではなく、そのうち消えていく写真なそうで。それもアート。

主役2人がとにかく淡々としていて、嫌な場面も特になく見やすい。
両足を合わせた裏が心臓に見える とか時折やはり芸術畑の人らしい言葉を織り交ぜながら進み、いつしか「死ぬのはこわい?」という話へ。「その時が待ち遠しい。最期だから」と、極彩色な服を着て、内側から輝くアニエス。眩しい。
そんな2人の旅路のラストはなんとも、、おフランスらしいビターな展開。だからこそのJRの優しさが滲み入る。

昨年お亡くなりになったのねアニエス…
JRが押す車椅子に乗って、ルーブル美術館の絵画の間を疾走する姿。その笑顔が素敵。
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