ねまる

デイアンドナイトのねまるのレビュー・感想・評価

デイアンドナイト(2019年製作の映画)
3.9
「善」の反対語は「悪」である。
「正義」の反対語も「悪」である。
では「善」と「正義」は同じものだろうか?
私は違うものだと思う。

復讐という行為は、善悪によっては「悪」だが、「正義」といえる。
善悪で測れないもののために「正義」があるのだと信じているから。

ただし「正義」は、個人の価値観の中にのみ存在するため、善にも悪にもなる危うさを内包しているのである。
個人にとって「正義」と対するものは「悪」だけど、社会にとって「正義」と対するのはまた違う「正義」なんだよな。

なーんて、頭が痛くなるほど考えていたのだから、傑作なのだろうけど、
内包しているテーマで言えば、数多もの物語で伝えられてきたものだ。

この作品が変わっていたのは、
このテーマを語る時、人物たちの葛藤や苦悩の物語を緻密に描き、間接的にテーマを考えさせる構成が多いと思うのだけど、
この作品はむしろ、「善悪」のテーマを台詞として強く問いかけ、登場人物の心情を間接的に理解させようという構成なところ。

脚本だけでは言葉だけが一人歩きをし、チープになりそうだが、
感情の書き込みの少ない登場人物たちが善悪の境を往来している光の演出や役者の演技力によって可能にしているのが凄い。

同じ景色で夜と昼が切り替わる映像だけのシーンが特に印象的。
あと、安藤政信の目。
台詞以上に感情を語るあの目。

プロデューサー山田孝之のドキュメンタリー『No Pain,No Gain』を観た。
Netflix長編verで言う、4〜7話がこの映画の製作過程にあたるんだけど、
映画を観た人は、いや観てない人も、是非観て欲しい。

大野奈々=清原果耶
山田孝之が奈々に込めた希望と、
清原果耶が奈々であった奇跡。
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