ろ

バッド・ジーニアス 危険な天才たちのろのレビュー・感想・評価

5.0

私が通っていた高校のスローガンは’受験は団体戦’だった。
黒板の真上にでかでかと掲げられたそのスローガンを見るたびに、なぜかモヤモヤした。

中間テストも期末テストも模試も入試も、そこに至る道のりも自分との戦いだった。
誰かが助けてくれるわけでもなければ、試験を受けやすいように配慮してくれるわけでもない。鉛筆を走らせる音や微かな独り言まで、周囲の音を吸い込んでしまう私にとって、試験は精神力が試される苦行でしかなかった。
そんな個人戦に打ちのめされてきた私には、ここに描かれていることの方がよっぽど’受験は団体戦’というスローガンにふさわしく思える。たとえそれがカンニングのための団結だったとしても。

ある人はお金のため、またある人は成績のため。
それぞれの動機は異なるように見えて、実は同じだったりする。
母子・父子家庭で貧しいから。両親を失望させたくないから。
カンニングは不正だと分かっていながらどんどんエスカレートさせてしまうのは、心の中に家族の顔を思い浮かべるからだ。

いい大学に行きなさい。安定した職業に就きなさい。
自分の一言が引き金を引いたとは知らず、成績表を前に一喜一憂する大人たち。
悪いことはしちゃダメだと教える立場の彼らの存在が、子どもたちの不正を招いてしまう。それはとても皮肉で残酷なことだと思う。

もしも受験生のときにこの映画を観ていたらどう感じただろう。
ABBACB・・・マークシートに連なる黒い丸に狂気を覚えた私にとって、それを音階にするというリンの発想は救いになったに違いない。
ろ