erica

判決、ふたつの希望のericaのレビュー・感想・評価

判決、ふたつの希望(2017年製作の映画)
4.7
"自尊心を傷つけるほどの暴言は
暴行と同じ重みとなる"

素晴らしい!これは傑作だと思う…!!
今まで観てきた法廷物の中で一番見応えがあったし、内容的にもすごく興味深かった。

テーマは"人間の尊厳"

言葉は時に鋭利な刃物にもなり得る、とはまさにこういうことだなぁと

レバノン人のトニーとパレスチナ人のヤーセル。
この2人のいざこざの発端を考えると、どこの国の誰にでも起こり得る、本当に些細なこと。
これがやがて国を揺るがすほどの大騒動へと発展していく、、

事の発端が些細な口論であるが故に、この遠い異国の地で起きた事件がとても他人事には思えない。
それでも裁判が進むにつれて歴史や宗教が複雑に絡んでくるから、理解するのがなかなか難しい…
でも、だからこそ深くて面白い!

私は1回観て、出てきた用語でわからなかったものをいくつか調べてから2回目を観て、やっと理解した(それでも100%理解したとは言えない笑)

最初に明らかな悪態をついたのはトニーだし、人に向けて絶対に言ってはいけない(人種や身分を侮辱するような)言葉を発したのもトニー。

この時点ではどう考えてもトニーに非があるように思えてならないのだが、先に手を出して相手に怪我をさせてしまったのはヤーセル。
(腹パンチで肋骨を2本骨折させてしまった)

その後もトニーやレバノンサイドの人々のパレスチナ人に対する態度は明らかで、、

でも実は、トニーがパレスチナ人を過剰に嫌うのには訳があって、、
実は辛く、忌まわしい過去があって、、

歴史的、宗教的に対立する者同士が歩み寄ることはやはり難しいのだろうか、、😞
と視聴者に思わせたところで救いが…

トニーがヤーセルの車の修理をしてあげるシーン
これは尊かった。。
さらにこの後ヤーセルがトニー宅を訪れ、"あえて"怒りを買うような言葉で挑発し、今度はヤーセルが腹パンチを食らう、からの謝罪。
ここでトニーは初めて、ヤーセルの当時の心境を身をもって思い知る。
このシーンも尊い。。

このヤーセルなりの謝罪があった時点で、判決はどっちに転ぶにしろ、トニーはヤーセルのことを赦していたのだと思うし、ヤーセルもトニーのことを赦し、やっと謝罪に値すると思えたのだと思う

人種や国籍、宗教など、その人物の出生や歴史的背景なんてものは取っ払って、最初から個と個で出会っていれば、友達にだってなれたかもしれない、と思わせてくれる…

そしてラスト。
被告の無罪判決に、両者ともに納得し、それぞれがそれぞれのチームと熱い握手や抱擁を交わす。
肝心の2人は言葉は交わさないにしても、互いに目と目を合わせ、認め合い、赦し合ったような表情を見せる。

歴史的な確執を綺麗さっぱり忘れ去ることは勿論できないけれど、お互いがお互いを赦すことで、過去は変えられなくても未来は変えられる…
平和への第一歩を思わせてくれる爽やかなラストですごく良かった。
erica

erica