くわまん

ターミネーター ニュー・フェイトのくわまんのレビュー・感想・評価

3.5
T-800に引導を渡せ!強化人間マッケンジー・デイビス爆誕!!!

みどころ:
M.デイビスの強化人間感
T-800の戦闘シーンの魅力
ファンを納得させる演出
“仕切り直し”た脚本
少し駆け足過ぎる展開
SFとして観てはいけない

あらすじ:
コナー親子の奮戦により、マシンが支配する未来は回避された。しかし、またも時を越えて殺人アンドロイドが顕現。確かにスカイネットは壊滅したのに、あの時と同じように、未来で何か大事をなす現代の標的を、葬りにやって来たのだ。
果たして今回の標的は誰なのか。そして未来はどうなってしまっているのか……。

――ハリウッド史上最高のエンディングだった『T2』に、続編が要るのか?

答えはもちろんノーでした。「『T2』以降の作品は無かったことにして…」という本作品の製作背景が、そう断言することに抵抗を無くしてしまっています。

『T2』が歴史的傑作になっている要因は、大きく分けて二つあると思います。一つ目は、シンプルでパワフルな人情ドラマです。人間性を備えた機械が見せる自己犠牲に、多くの観客が“なぜ泣くか分かって”号泣しました。

「少年を殺人マシンから守れ」というミッションが課されたとき、人間は同情心や正義感をもって自発的に行動できるかもしれませんが、自分が死にそうとなれば話は別で、命惜しさに任務を投げ出すのが通常でしょう。一方アンドロイドは、手がもげようが首が飛ぼうが停止するまで任務を全うしますが、そこに意思は無いので、守ったというより機能したという無機質な感じがします。

では、人間とアンドロイド双方の長所を備えている者、すなわち「いつ何時でも自らすすんで、自身の損害を一切顧みずに、困っている他人のために行動できる者」とはどういう存在かというと、それはもはや聖人です。ですから、『T2』最終局面におけるT-800は聖人なんですよね。しかも、「人工物でありながら…」というのが更にポイントです。「欲のために争い続ける人類を、良い方向に導こうと背中で語ってくれた父的存在は、人間が殺人用に作った機械だった」からこそ、力の使い方次第で結果は180度違ってくることに圧倒的な説得力が生まれ、「運命は自分(ひいては人類)次第だ」というエンディングにこれ以上ない熱量がこもっているんですね。やはり、このエンディングは完璧なんです。

『T2』のもう一つの魅力は、言わずもがなシュワちゃんです。T-800を演じるのは、シュワちゃんでなきゃダメなのです。シュワの人間離れした肉体と、期せずして機械っぽい棒読み演技が産んだ奇跡のキャラクター、それがT-800です。まさに専売特許です。しかしながら避けられない問題として、シュワはもうジイサンだということがあります。T-800として出演させるにあたり、アニメのキャラと違って、演者の加齢を考慮しなければいけません。

さて、こういった伝説的作品の続編を作るというのであれば、当然「足さなければいけなかった」要素がはっきり提示されないと、観客は満足できません。というわけで『T2』の続編は、「完璧な引き際を撤回した理由」と「シュワの現状を考慮した使いよう」の二点において、観客を納得させる結果を出さない限り、駄作というより蛇足になるのです。“無かったことに”された続編には、『T3』など決して駄作ではないものもありましたが、残念ながら蛇足は蛇足でした。

こういった背景を踏まえますと、僕はこの『ニューフェイト』、なかなかの佳作と感じました。まず脚本ですが、総じて“『T2』のやり直し”でしたね。ベタな物語には長年人心を動かしてきた普遍的な力が備わっていますので、焼き増しでもなぞっただけでも、演出さえ良ければ良作になりますよね。その演出も、ラストバトルを筆頭に、信念の持つ力の強さや自己犠牲の尊さがしっかりと伝わるようになっていて、とてもアツかった。ですが何よりも良かったと感じたのは、強化人間グレイスの存在でした。

グレイスはカイル・リースとT-800を足して2で割ったようなキャラクターですが、彼女がアンドロイドではなく人間だというのがミソです。彼女の最期の行動は、『T2』における溶鉱炉のシーンと同じではありますが、人間が死の恐怖を克服したという点で、味わいが違います。これは、「足さなければいけなかった要素」として十分だったかと思うんですよね。「恐怖心を持つ人間でも、志ひとつでT-800のような気高い行動がとれる」ことを、この新キャラは示したのです。その働きを見たときに、僕はもしかしたらキャメロンが、ターミネーターシリーズをシュワから卒業させようとしているんじゃないかなぁなんて感じました。

グレイスを演じたのはマッケンジー・デイビス、『ブレードランナー2049』では娼婦役をこなしていましたが、今回のように色気の無い役をさせると更に上手いように感じます。「カワイイけどエロくなくて、中性的でも男勝りでもなくて、少女と女性の中間」という難しい役だったと思うんですが、完全に自分のものにされていましたね。眼力が素晴らしいです。

都合よくアイツを即死させやがってとか、はぐれT-800って何だよワケわからねえとか、読み取り専用のカールが改心するかよとか、ツッコミなんてもちろん無数にあります。特にカールのくだりは、サラとの和解をはじめあまりにも淡白でしらけそうでしたが、本編を際立たせるための苦渋の選択だったのでしょう。ファンとして、本筋以外を大幅に大目に見るくらい、わけもございませんでしたよ笑

この新章の序章が、T-800からグレイスへのバトンタッチだったのだとしたら、ニューフェイトがどう展開されていくのか、今後とても楽しみです。