keith中村

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。のkeith中村のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

 2年間待った甲斐がありました。
 ようやく"Losers' Club"のラッキー7にもう一度逢うことができて大満足。
 
 少年時代の彼らが見られたことも嬉しいんだけど、大人になった彼らが、もはや本当に成長した姿にしか見えないのも素晴らしい(激痩せ・イケメンにトランスフォームしたベンくんは除く。大人パートのジェイ・ライアンは桐谷健太に見えて仕方がなかった)。
 特に、ジェームス・マカヴォイ、ジェシカ・チャスティン、ビル・ヘイダー。これまで何度もスクリーンで観てきた有名な役者さんたちなのに、どう見てもビル、ベヴ、リッチーの子役たちがそのまま大きくなった姿。
 本作のキャスティングを決定してから、前作の子役をオーディションしたのかと思うと、さにあらず。チャスティンさんだけは前篇製作中に決まってたらしいけど、ほかは未定だったらしい。凄いなぁ。
 
 さて、物語について。
 基本的には前篇と同じことが起こるんだけど、今回は「第一部:リユニオン」「第二部:過去との対峙」「第三部:最終決戦」、しかもそれぞれのパートの時間配分がほぼ三分の一ずつという、「エンドゲーム」とそっくりな構造。
 
 前篇はあくまで「怖がらせる映画」に徹していたが、今回はコミカルなシーンも多くて(笑いもかなり起こっていた)、明らかに映画のトーンが異なっている。
 これは、「物事のやり過ごし方を知らずに正面切って向き合っていくしかない少年時代」(前篇)はシリアスになるしかなく、「それなりに物事のやり過ごし方を覚えた大人時代」(後篇)は恐怖すら相対化して笑える、という明確な意図を持った演出だと感じた。
 
 なお、本作のコミカル要素の一端を担うのが、開き直ったかのように臆面もなく引用される様々な映画。
 冒頭すぐ、閉まるシャッターをぎりぎりで潜り抜けるマカヴォイがインディ・ジョーンズについて言及したことが、観終えて考えると、「はい。今回は引用しまくりますんでよろしく」というメタな宣言だったと思えてくる。

 憶えている分を列挙すると、
・全裸で走り抜ける老婆→「ヴィジット」
・頭に脚が生えて蜘蛛化→「遊星からの物体X」
 (ここは律義に"You gotta be fucking kidding."まで言ってくれる)
・「イピカイエー!」→ジョン・マクレーン刑事
・親指突っ込んで目ん玉潰し→「死霊のはらわた」
・気持ち悪い体液をドバーとかけられる→「スペル」
・"Here's Johnny!"→「シャイニング」
 (同シーンの血の池地獄もそうかな?)
・シャワーカーテンが端からポロポロ→「サイコ」
・「ロストボーイ」のポスター→同じキング原作の「スタンド・バイ・ミー」のキーファー・サザーランドとコーリー・フェルドマンの出演作。
 (マカヴォイがタイピングしている部屋もドレイファスの部屋とそっくり)
・質屋に飾ってあるナンバープレート→同じキングの「クリスティーン」のそれ。
 (質屋の主人役はスティーブン・キング御大!)
 
 あと、みんなからシナリオの「ラストがよくない」と言われる繰り返しギャグは何かで観た気がする。
 (最初に駄目出しする監督役がピーター・ボクダノビッチ!)
 
 劇場でかかっている「エルム街の悪夢5」(これは前篇でもちらっと映る)とゲーセンの「ユー・ガット・メール」のポスターはオマージュというより時代説明かな。

 鏡張りのファンハウスは「アス」に通じるんだけど、製作時期を考えるとこれは偶然かぶったんでしょう。
 
 ちなみにこういう列挙は、自慢げな上に、「逆に自分が何に気づけなかったか」を露呈することになるんで恥ずかしいわけで、ほかに気づいた方は是非教えてください。
 そうそう。エンドロールの曲リストに「未知との遭遇」の「ダーララララー(ああ、頭悪い表現だ……)」があったけど、どこで流れたか全然気づけませんでした。
 
 前作を観た友人がベヴに対して、「結局デブじゃなく、イケメンを選ぶのかよ!」と怒ってたんですが、今回もベヴは「Your hair is winter fire, January embers.」をビルが贈ってくれたと憶え違えをしていたのが、泣ける。というか笑える。
 まあ、デリーを離れた人間はどんどん記憶が薄れていくという設定なんで、ベンくん、勘弁してあげて!
 
 ベヴについて、もう一つだけ。
 あれだけ辛い少女時代を過ごしてきた彼女なんだから、大人になってから社会で活躍しているシーンをせめてひとつでも描いてほしかった。「ああ、この子も立派な大人になったんだぁ」って安心させてほしかった。
 1990年版にはそれがあるんだよな~。
 まあ、あっちもその直後、こっちと同じ目に遭っちゃうんだけど……。