「MINAMATAーミナマター」は劇場で観たんだけれど、同時期に公開されていたこちらは未見でした。
6時間12分はさすがに尻込みしてしまって…。
原監督作品は、奥崎謙三や井上光晴のように個性が強いひとりの人間に密着した映画なら当たり前なんだけれど、群像劇(ドキュメンタリーだからそう呼ぶのは相応しくないけど)の場合であっても、傑出して興味深い人間が登場する。
本作では浴野教授がそう。
もうこの浴野先生のことが大好きになる。
本篇が6時間越えなんで、レビューも書き始めたらキリがなくなりそうだから、恐らく誰も気づいてないことをひとつだけ書きますね。
熊本大学って国立だよね? そこまで予算がないの?!
脳の標本を作るときに、コルク板を俎にし、普通の台所包丁でスライスしてる…。
で、その前のシーンで、それとは別に、水俣病で亡くなった方の検体の脳を運ぶところ。
浴野先生自身が抱えて大阪から熊本まで持って帰る。
ここに、皮肉な奇蹟が生じてましたよね。
「脳の運搬」なんてさ、劇映画のイメージなら、頑丈な厚手のゼロハリみたいなケースに入れて、移動するイメージじゃん。
全然違うの。
脳をタッパーウェアみたいのに入れてホルマリンで満たす。
それをユニクロの袋に入れる。ユニクロですぜ!
さらに風呂敷で包む。
最後に布製のトートバッグに入れる。
で、浴野先生が提げて移動。電車では膝の上に抱えてる。
なんか、すごい。
でね。
不謹慎だけど、爆笑しちゃったのが、そのトートバッグにブランド名かわかんないけど、「Mercury」って書かれてたんですよ。
水俣病で亡くなった方の脳を運ぶバッグに「水銀」って!!!
ここは原監督もコントロールできなかった皮肉な偶然。
そういうのも含めて、エキサイティングな映画でした。