だい

シリアにてのだいのレビュー・感想・評価

シリアにて(2017年製作の映画)
2.9
オシム元監督夫人のアシマさんが、
ユーゴ内戦の時に包囲されたサラエヴォに取り残されて、
「スナイパーたちが狙う中、配給物資を取りに行くのにも隙を見て全速力で走って行った。撃たれてしまった近所の人もいた」
という話と重ね合わせて観たんだけど。

正直、物足りなさはあった。

先述のアシマさんの話にしても、
「ラッカは静かに虐殺されている」を観ても、
こういう状況下って、若い人も含めてみんな死と常に向き合っていて、
ギリギリの所で正常な精神を保っているような感じなのに、
娘たちがトイレに入りたくないシークエンスとか、
長女の彼氏の気楽感とか、
ドアにぶっっとい閂を2本も差してる部屋の感覚じゃないんだよなあ。

「灯りが漏れちゃいけない」
「大きな音を立てちゃいけない」
っていう中の、
ラジオだったり何だったり、
なんか、ヒリヒリした「死」があまり伝わってこない。

普通の家庭の、普通の日常とのギャップとか、
麻痺した感覚とか、
そういうのを描きたかったんだろうなと思うけど、
でもそれって、
外国人の描く戦地、って印象が拭えない。

侵入者2人も、見つけた家人を迷わず殺すでもなく、
火事場クズ野郎ではあるけど、
やっぱり何か戦時の切迫した空気ではないんだよなあ。


緊急時にさ、
1人を守るために全滅の危険を冒すか、
1人を見捨てることで残りの安全を確保するか。

撃たれた人、
取り残された人、
何もできない乳児、

1人でも多くの命のために、
誰かの命を諦めるのは間違ってないと、思う。
だい

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