やまモン

スーパーシチズン 超級大国民のやまモンのレビュー・感想・評価

3.6
【取り返せないもの】

読書会に参加したところを逮捕されて、16年間投獄された上、拷問に耐えきれず当初逃がした仲間の名前を吐いてしまい、仲間を間接的に殺してしまった過去を持つ老人。

朝イチから暗いタッチのオンパレードで、暗澹たる気持ちにさせられた訳ですが、この暗さが、台湾現代史のリアルであり、揺れる時代に翻弄された一人の男の心象風景なのでしょう。

そして、暗さの一番の根源は男が既に死んでいるということ。勿論、精神的の意味でですが。

それでは、果たしてこの、心の死んだ男は救済されたのか?あるいは復活できたのか?ラストのシーンはこのような問いを私に投げ掛けました。
しかし、私の見解は「否」です。
なぜなら、彼がどんなに祈っても失われたものは元には戻らないから。そして、失われたもの、それは他人の命であり、自分の時間です。
命と時間がかけがえのないものだからこそ、それは私に、救済を求めることの意味、そしてその虚しさを痛感させてくれました。

くれぐれも、悔いのない人生を。
そして、起きたことを後悔したり引きずったりすることの無いようにしたいものです。