LalaーMukuーMerry

ドント・ウォーリーのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

ドント・ウォーリー(2018年製作の映画)
4.3
アルコール依存症の男がグループトークの会により依存症を克服する話であり、幼い時に養子に出された(母親に捨てられた)男が心の傷を癒すきっかけをつかむ話でもあり、交通事故で四肢不随の車椅子生活になった男が絶望の淵から抜け出る話でもある。
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好き好んでアルコール依存になる人などいない。なる人にはそれぞれ原因となるつらい過去がある。グループトークの会は自分のことを話すことで、心を軽くするプログラムなのだが、つらい経験をした人は(普通の人でも)自分のことにフォーカスし続けることは難しい。ややもすると知らないうちに人のことを話している。大概は自分の不運と、不運の原因をつくった他人への恨みごとだ。それを自分の方にフォーカスするよう思考パターンを変えること。その気づきが大切ということ。ハッとした。
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自分の気持ちに深くフォーカスすることで、(不思議なことに)人の気持ちにも思いが至るようになる。それが立ち直るきっかけになるのだ。この映画の終盤、その気づきが生まれる瞬間と、その後の彼の行動を描いたシーンにはウルっと来るものがありました。
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最近読んだブレディみかこ著の「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」にSympathyとempathyの話があって、ちょっと通じるものがあると感じた。どちらも同情・共感と訳されるが、日本語には一語で対応する言葉はない。Sympathyが普通の(うわべだけの)同情・共感ならempathyは深い同情・共感、つまり相手の立場になって五感を総動員してその気持(痛みや喜び)を想像すること。Empathyを感じる力を、一人一人が今より少し高めたならば、他人を傷つけることは減るだろう、社会はもっと良くなるだろう。
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(イギリスには学校教育の教科の中に数学、国語と並んで「演劇」があって、他人の立場にたって考える習慣や、empathy力、コミュニケーション力を高めることに一役買っているという。それにひきかえ日本では東京芸大にさえ「音楽」と「美術」しかなく、どこの国にもある「演劇」学科が無い(と鴻上尚史(劇作家・演出家)が嘆いてた))
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Empathyの対象は人間だけではない。犬や猫、鳥やカエル、でんでんむしやミジンコ、桜やトマト。よーく観察してみれば、生き物になりきってみれば、生き物の気持ちがわかるようになる。何が好きで何が嫌いかがわかるようになる。生き物の気持ちを、みんなが今より少し理解して尊重するなら、自然破壊や食品廃棄は今よりマシになるだろう(と宮台真司(社会学者)が言ってた)。
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脱線したとは感じてないが、普通これは脱線かな(笑)