しおえもんGoGo

日日是好日のしおえもんGoGoのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
4.5
お茶を習ったことがある人にとってはずー--っとあるあるある!
私も無駄にお茶歴が長いもので、習い始めた時の事を思い出した。しかも同じ表千家なんで余計に。

そうそう。袱紗捌きとかいきなり言われて、ただただ意味が分からないままにやらされるよね。
水屋で茶巾絞る手順なんか必要?とか。
必死で覚えたと思ったら風炉から炉に変わって全部リセット。そして半年後また記憶がない状態からスタートするエンドレス記憶喪失。しかも合間に一か月だけ中置きの点前が挟まってますます意味不明に。
大寄せの茶会での正客譲り合い合戦もめちゃくちゃあるある。私は何も知らない時に案内の人が困ってるからと思って うっかり次客に座って地獄を見たことがある。一同総姑化したみたいな視線&注意が飛んできてめっちゃ怖かったが、正客に着いた年配の先生が私を初心者だと見切ってすぐに鷹揚に優しく導いてくれた。

私は典子のような真面目ではなく、ほぼ和風カフェ気分で参加していたゆるゆるの生徒だったけれど、先生は武田先生ぐらいすごい先生だったと思う。樹木希林が私の先生に何となく佇まいが似てるせいもあって、今は亡き先生を懐かしく思い出した。
いつもあの位置に座って、右じゃない左 とか せかせかしないとか もっと自然に流れるようにって言われてたな。

私のようなお菓子目当てのいい加減な生徒でも、日常から隔絶されたような庭の景色、発光してるんじゃないかと思うような新緑の芽とか、風の音とか、もうすぐ降り出す雨の匂いとか、秋になり急に気温が下がった肌寒さとか、その時に出ていた栗のお菓子とか、今年もこのお茶碗が出る季節になったなとか、今でも鮮明に覚えている。もう止めてから15年も経つのに。

そして私の先生もお点前は体が覚えるのだと言っていたっけ。
まず器を作ってから中身を入れる。今更だけどもっとまじめに向き合えば良かった。先生に申し訳ない事をした。

もう一つ、とても印象に残ってるのが何度か「お茶好きなの?」と聞かれて肯定しないシーン。私も習っていた当時お茶が好きなのかと言われたら決して積極的に好きだと思っていたわけでは無いように思う。実際行くのが面倒くさいと思ったこともあるし、何かあればサボっていた。でも一時引っ越しのために中断してもまた再開し、先生の体調不良で教室が無くなるまで続け、今もお稽古中の景色を思い出す。
時間が過ぎて見てから「私ってお茶好きだったんだな」と思う。これもお茶やってる人あるあるなんだろうか。

私にとっては自分の個人的なお茶体験と亡き先生への想いと後悔もあって非常にグッとくる映画だった。
多少そこまで過剰にする必要ある?と思えるシーンもあるけれど、しみじみとお茶を通じて人生も同じことを繰り返せることの幸せ、でも同じ日は二度とない事をかみしめて、ちゃんとしっかり暮らしていこうと思えた。

ああ、本当にもっとまじめにやれば良かったな。
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