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日日是好日の会社員のレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
4.0
一人の女性が茶道と出会い、人生を歩んでいく中で様々な気付きを得ていく。

将来に悩む大学生活、否応なく自分と比較してしまう身近な人間の就職や結婚、突然訪れる親との死別。人生には様々な悩みや苦労が存在する。
しかし、幼い頃は全く意味の分からなかった小難しい映画に、大人になった今は感動することができるように、人生を歩む中で人は徐々に変化し、分からなかったものが徐々に分かるようになっていく。

主人公はほぼ毎週欠かさずお茶に通った。その中で、ある日突然気付きを得ることがしばしば起こる。毎日が同じことの繰り返し。しかしその中には微細な変化があり、その瞬間は文字通り一生に一度しかない。苦楽はまるで四季の変化のように繰り返され、苦しみも時が経てば和らいでいく。そうした感性を持つがゆえに、毎日がそれぞれ、良い日だと肯定することが出来る。

すぐに答えを求め、やりたい事を明確化することを強要される世の中において、形に心が入り込むような、時間をかけてじっくりと気付きを得ていく生き方を認める本作は、茶をたてる時のような、凛とした輝きを放つ。

葬儀の後、庭先で桜を見上げるシーンは、たった一言でありながら、言いようもなく心を揺さぶられた。
人生を俯瞰するようなテーマであり、大女優の遺作としてこれ以上ない程相応しいと感じた。
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