事情があり育てることができずベイビーボックスに捨てられた赤子を売り捌くブローカー。ある赤子とその母親との旅を通じて、それぞれの思いが徐々に変化していく。
ブローカーの側と、それを追う警察の側と、二つの視点から描かれる。人身売買という卑劣な行動をとる側は、いつの間にか疑似家族のような関係性が生まれ、あたかも幸せな理想の空気が漂う。一方で、警察の側は明らかに暗く重苦しく描かれ、手段と目的が倒錯しいつの間にか社会や観客の視点から解離していく。
疑似家族の側はどんどんと行動範囲を広げるのに対し、警察の側はほとんどが張り込みの車の中のシーンであったことも印象的だった。
ベイビーボックス、日本でいう赤ちゃんポストを主題にしているが、やはり是枝監督、母親の置かれた立場やそれによる葛藤といった問題に矮小化することはない。
捨てられた子供達は、実の母親の迎えを待ち続けることもあれば、養子に迎えられることもある。施設は居心地のいい家族のような存在でありながら、そこから飛び立ち成功することもまた理想とされる。また養子に迎えられても、その夫婦に新たに子供が出来た際には肩身が狭い思いをすることになる。あるいは捨てることはなくとも距離を置かざるを得なかった家族の姿もある。
様々な子供たちの姿、いや、大人になった彼らの姿をも含め描くことで、困難な状況に置かれる子供たちが再生産されうる悲しい現実を描きながら、人間の持つ可能性への期待を抱くことができる。
どんな人間も、この世に生まれてきたことを祝福されない者はいない。
仮に過ちを犯してしまったとしても、いつかやり直すことが出来るような社会が来ることを願うばかりである。
