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ダンサー・イン・ザ・ダークの会社員のレビュー・感想・評価

3.0
母の愛


移民のシングルマザーとして息子と二人暮らしをする母親が主人公。彼女は徐々に視力を失うという病を患っており、しかもなんとそれは代々遺伝するものだという。母親は息子の幸せただそれだけを願い、視力が低下する前に息子に手術を受けさせるべく、必死に貯金をしていた。
工場で働きながらも、職を失いかねないため目のことはひた隠しにしていた。また大好きな舞台の練習も、役を下ろされかねないため打ち明けることはできない。徐々に視力が低下しついに日々の生活に支障が出始める中、ある日事件が起こる・・・。


気分が落ち込む鬱映画として有名な本作。ドキュメンタリー調で始まる冒頭の舞台稽古のシーン、予想していなかった雰囲気に、見る映画を間違えたかと感じた。
終始暗く重苦しいシーンが続く中、彼女の希望の証でもある空想のミュージカルシーンが挿入される。しかし必ずしも雰囲気が180度変わるというわけでもなく、彼女の心理状態に歩調を合わせ、現実との境目をあえて曖昧にしているようだ。それがラストの独唱につながっていく。このあたりの描写は独特で、見事だ。


皆、主人公のハンディキャップに対しては最終的に理解を示し、一対一の関わりでは皆心開いて支援の手を差し伸べてくれる。
しかし社会的弱者として追い詰められてしまった以上、主人公はああするしかなかったのではないか。行動一つ一つ、賛否両論あれど必然性に満ちており、社会構造の側に根深い問題があることが示唆される。
我々一人ひとりの理解や行動が求められる、というリベラルな決まり文句が横行する中、必ずしもそれだけではどうにもならない人々が存在しうることを痛感させられる。
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