ベルサイユ製麺

Love,サイモン 17歳の告白のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

Love,サイモン 17歳の告白(2018年製作の映画)
3.5
LGBTQ関係の作品はもう出来る限り観ておこうと思っております。出来る限り色々なシチュエーションを想定できるようになりたいですし、なにより自分の心がどう反応するかを知りたいし。

タイトルにある通り、17歳の高校生の男の子サイモンが主人公。父は学生時代QBだったスポーツエリートの明るい人。母さんは学校代表??多分ミスなんとかで、進歩的な女性。妹は料理大好き。家族仲はとても良い。友達にも恵まれている。…サイモンには誰にも伝えてない秘密が有る。ずっと前から同性にしか魅力を感じない。具体的な行動に移した事は無いけど、ゲイなのは間違いないみたい。
ある日、サイモンの学校の匿名掲示板(←この文化がよく分からなかった。多分です)に自らがゲイである事を隠して生活する“ブルー”というハンドルネームの男の子が居ることが判明する。衝動的にサイモンは“ジャック”というハンドルネームでブルーのポストにコメントする。「僕もゲイなんだ」と。それから2人は一先ず良き理解者としてメールのやり取りをするようになる、…のだが、サイモンの不注意で知り合いにそのメールを見られてしまい…。

サイモン君はゲイであろう事を周囲に言い出せない、言わば真のジェンダーの入り口に立っている状態です。なので、別段パートナーがいるって訳でも無い。…成る程、それはカムアウトすべきか悩ましい状況ですね。残念ながら、言って得する事は想像しにくいし。
サイモンはメールの件で脅され、止む無く親友達を裏切ってしまいます。この裏切り自体はジェンダーとは無関係なのですが、自分の事と親友を計りにかける余裕も無い程にサイモンはアウティングを恐れていたとは言えそうです。
結果、サイモンは掲示板で(酷い…)アウティングされ、彼がゲイである事は学校中、彼の家族にも知れ渡り、更には親友への裏切り行為も明るみに出て、サイモンは完全に孤立することになります…。

正直、自業自得な感も有りますが、追い詰められたサイモンがどのような行動に出るのか?というところが物語の核になります。

今作はアメリカのティーンの間で知られているヤング・アダルト小説が原作になっているそうです。…確かに、もうメチャクチャにヤング・アダルトな感じ!役者の佇まいも、演出も撮影も、劇伴も、全てがなんとなくスケール感に乏しくて、公共放送でやってるドラマみたいな作りで、特定の層にだけキッチリ届けば良い、という作りに見えます。自分には、「好きな人は好きだろうな」としか感じられませんでした。でもまあ、この辺りは全て鑑賞前のイメージ通りです。
それにしてもサイモン恵まれすぎ!両親に理解が有り過ぎ。親友達優し過ぎ。学生達おっとりし過ぎ。何より本人が聡明で行動力有り過ぎ。これが参考になる人どれだけ居るのかな…?
と、愚痴っぽくなっちゃった所で我に帰りましたが、コレは要はサイモンと同じような境遇にあるティーン達に向けて最大限にポジティブな手引きになる事を期して作られた物語なのですよね。いきなり『ブロークバック・マウンテン』じゃ、怖くてカムアウト出来なくなっちゃいますよね…。その辺り考慮して、ティーン向けに限定すればもう相当に素晴らしい作品だと思います。授業で見せるとか、学生証が有れば無料で鑑賞出来るとかしても良いくらいなのでは?ポジティブなイメージは必要。絶対。

…気を取り直して。
シーン単位で好きだったのは、ローティーンのサイモンが毎晩の様にダニエル・ラドクリフの夢を見るシーン。ナルホド…。そして、なんと言ってもクライマックスの観覧車ですね。観覧車…。ナルホド。観覧車の思い出、…有る有るー!
ある大きな出来事のキーパーソンになるマーティンていうクソガkいや、はみ出しボーイが居まして、ぼんやり観てるとホントこいつ圧力鍋のピー!っていうところに座らせてやろうかって思うくらい腹立たしいのですが、グッと堪えて、彼の事をじっくり考えなきゃダメだなと思いました。許す・許さないとか以前に、自分が彼の立場だったら…って。例えば、世のヘイター達は、本当にヘイトしてる/したいのかな?何が彼等を追い詰めて、あんな寂しいことをさせているのか。人は当たり前のように違ってしまっていて、でもその違いが分かりやすいものばかりとはかぎらないんですよね。難しい…、

ところで、この趣旨の作品の感想でこんな事書くべきでは無いのかもしれませんけど、…サイモン役のニック・ロビンソン、めっちゃ可愛い。『エブリシング』にも出てましたね。なんというか、ホント伝わり難いと思うのですけど、コメカミ辺りの雰囲気が良いのですよ!二宮さんとかイム・シワンに通じる…言わなきゃ良かったかなぁ。

凡ゆるジェンダーの方にオススメ!年齢も、敢えては問うまい。

凡ゆる愛を堂々と語り、それに耳を傾けよう。
皆様のフライトの行く先がソフトランディングである事を祈ります。

電気グルーヴ『虹』を聴きながら
LOVE,セイメン☺︎