ひろぽん

ある少年の告白のひろぽんのレビュー・感想・評価

ある少年の告白(2018年製作の映画)
3.0
愛情を受けて育ち、輝くような青春の大学生活を送っていたジャレット。ある事をキッカケに自分が同性愛者であると気づき、両親の勧めによりそれを「治療」する矯正セラピーに参加する。そこで彼は自分を偽ることを強いる衝撃の治療実態と、彼の心の憤りや疑問などを描いた実話に基づく物語。


同性愛を告白した少年ジャレットとその家族模様、同性愛者を矯正する不適切な施設の全貌を描いていくお話。

牧師として成功している父が教会で、美しく思いやりに溢れた妻と優秀で誠実な息子を持てて幸せだと述べている。だが、そうでなければ話は別なのかもしれない。この父の偏った幸せという宗教観や価値観が息子や妻を徐々に苦しめていく。

ジャレットは大学に入り仲が良かった友人にレイプされそうになり、そこから自分が女性ではなく男性が好きなのだと自覚していく。高校時代には彼女がいるも、その彼女とキスくらいまでしかせず乗り気じゃなく拒むという有様。本当は分かっていたのかもしれない。

その事実が家族が知れわたり、牧師である父はそれ関係に詳しい牧師の知人に相談し、勝手に男たちだけで決めてしまうという自分勝手さ。母はただ従い悲しそうな表情でジャレットを見つめる。

有無を言わさず矯正セラピーに送られることになり、そこでは苦痛の毎日がまっていた。意味の無い人権を無視したような活動内容。トイレまで監視が来るという、まるで囚人のような扱いを受ける。

活動内容は問題大ありで、決して家族には話してはならないという他言無用の姿勢。

セラピーには多額の費用が支払われておりビジネスとして辞めようにも辞めれない。同性愛の子どもたちを施設に預けることにより、目を背け続ける保護者。見事に需要と供給の関係が一致している。

そして、切っても切れない関係にある宗教問題。自由の国アメリカでLGBTQは受け入れられているのかと思いきや全くそうではない事実に驚かされた。そして、州によるがいまだにこの矯正施設が存在しているというのだから呆れる。治療して治るようなものではないだろうに。

そして、ジャレットを理解してくれる医者と母の温かさは唯一の救いだった。特に母が施設長のサイクスに対して“恥知らず”と暴言を吐くシーンは爽快。自分に対する戒めとしての発言にも愛を感じた。ジャレットがサイクスに対してブチ切れるシーンも最高だった。

ラストの字幕で明かされる指導する側だったサイクス氏の同性愛。自分と同じ苦しみを施設に入所した人たちに味わせようとしていたのだろう。

実話ベースの話だから面白みは全くないが、口を開けてぽかんとしてしまうほどの衝撃的な内容と事実だった。将来自分に子どもができた時にこの父のように受け入れられる自信はないな。

母親役のニコール・キッドマンの愛のある演技がとても良かった。
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