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スパイダーマン:スパイダーバースのmaverickのレビュー・感想・評価

4.7
第91回アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞。定番のディズニー作品を抑えての快挙。とにかく凄いのはそのアニメーション描写。『天気の子』を観て、日本のアニメーション技術の凄さを改めて感じたが、アメリカのアニメーション技術もまた違う方向で凄い進化を遂げている。さらに本作は、同じアメリカのディズニーやユニバーサルとも違った映像描写で度肝を抜く。アメコミが持つ魅力をアニメーションでさらに進化させた表現方法には驚かされた。観るコミックとでも表現すればよいだろうか。何年か先にはこうしたコミックの楽しみかたが出来るのかもしれない。アメコミは日本の漫画と大きく違い、同じキャラクターでも描く作家によって様々な解釈違いの作品が存在する。設定もその都度変わり、それも含めて楽しまれている。並行世界のマルチバースと呼ばれるこの世界観は、スパイダーマンにおいても様々な作品を生み出した。そのアメコミの設定を生かしたのが本作。並行世界が繋がり、様々な世界のスパイダーマンが同一世界に現れる話。もうスパイダーマン版アベンジャーズなオールスタームービーでわくわくした。コミック版を網羅し、作品愛に溢れた点がとにかく素晴らしい。評価が高いのもそれはもう納得である。スーパーヒーロームービーでは鉄板の、主人公の成長を描く物語にも感動がある。自分に自信を持てなかった主人公が壁を乗り越え、自信を持って堂々と前へと進む姿に、多くの人が自分と重ねて勇気をもらえることだろう。スタン・リーがスパイダーマンという作品に込めたテーマが本作でしっかりと表現されていた。誰もがスーパーヒーローとなりえる。今の時代だからこそ響くテーマだった。黒人の少年が主人公だったり、スパイダーグウェンなど女性が活躍する姿を描いた多様性も、アカデミー賞を受賞するに相応しい作品性であった。実写版のスパイダーマンシリーズは、MCUと絡めての展開が終わりを迎えるかもという残念なニュースが入ってきた。ソニーとマーベルとの関係という大人の事情であるが、作品を大事にしているファンのことを大事に考えてほしい。そんな大人の都合で作品を壊してほしくはない。並行世界を描くという点では、また別の世界を描いてもよいだろうが、MCUのスパイダーマンの世界は唯一無二なのだから。本作にはスパイダーマンへの愛が溢れていた。今後もそうした作品が作られることを切に願う。ソニーよ、マーベルよ、信じているぞ。
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