「夜働くには、理由がある、光だよ
私には光が眩しい」
女流監督が織り成す、オリジナル脚本による、官能的な実験映画🔥
『愛の嵐』 (1974)
🇮🇹イタリア 🇺🇸USA 117分
監督 リリアーナ・カヴァーニ
脚本 リリアーナ・カヴァーニ
脚本 イタロ・モスカーティ
撮影 アルフィーオ・コンティーニ
音楽 グニエレ・パリス
配役
シャーロット・ランプリング
(ルチア 元ユダヤ人捕虜 指揮者夫人)
ダーク・ボガード
(マックス 元ナチス将校 ホテルの夜間フロントマン兼ポーター)
ナチスの強制収容所において、美少女のルチアとナチス将校のマックスは、肉体的悦楽から恋に落ちる
ジャケットの用に、ルチアは生き残るために、その魔性の美貌をフルに使って、様々な将校たちを籠絡して、生き残ったようである、それは、マックスの戦略の勝利でもあった
ドイツ敗戦後は、ルチアとマックスは散り散りとなる
ルチアは成り上がって、アメリカの有名な指揮者の婦人となっている
一方、マックスは、ウィーンに戻り、ひっそりと、老舗ホテルの夜間のフロント係をやっている
このホテルは、オーストラリア人元ナチス高官たちの秘密の交流所でもある
彼らはナチスであった事の証拠隠滅のために、交換殺人なども行っているみたいだ、マックスも怯えながらも、殺人を行う
さて、湿ったある夜、そのホテルで、ルチアとマックスは再会してしまう 凍ったような表情の二人、指揮者の夫もいるその空間
夫の演奏会、モーツァルトの『魔笛』である 暗闇の中で、マックスはルチアを見つめてしまう 気配を感じて、ルチアは美しき横顔をマックスにじっと晒す 女が濡れる瞬間を、リリアーナ・カヴァーニは捉えている そして、暗闇の中に夫である指揮をしている白き手が、蝶々の様に舞っている
数日の逡巡の後、ルチアとマックスは結ばれる ルチアの悦び叫ぶ声、「あなたを待っていたの」
ルチアは夫を捨てる、しかし、それは命懸けの愛である 何故ならルチアはマックスの過去の凶行の生き証人であるから
ナチズムへの傾倒の過程を描くのであれば、劇映画は時間的に足りない その辺りは、ジークフリート・クラカウアーの名著『ガリガリからヒットラーまで』を読書すればいい
一見、アンチモラルな内容ではある
しかし、リリアーナ・カヴァーニは
究極の恋愛映画、究極のファムファタール映画として、男女の崩壊するさまを
描き切っている
シャーロット・ランプリングの眼差しは神秘的で美しい、また、髪型次第で本当に少女時代と見紛う瑞々しさの奇跡
オーストラリア人によるナチズムの過去も、制作当時としては、斬新過ぎる内容である
クリムト、エゴン・シーレなどのウィーン世紀末絵画を彷彿とさせる、艶やか映像、フランス、ギュスターヴ・モローの『サロメ』の要素を加える事によって、映画は、更に、幻想的・神秘的・退廃的に昇華されている
世紀末絵画の時代には、確かにナチズムへの傾倒の気配があったようだ
「忘れた過去が、再び甦った亡霊が私を支配しようとしている 私はあの声と肉体から逃れられない」
2023ー93ー72