カルダモン

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイのカルダモンのレビュー・感想・評価

4.8
原題『シカリオ・デイ・オブ・ザ・ソルダード』、
今回の場合やはり原題の方がしっくりくる。

『ボーダーライン』の続編が製作されると知った当初、期待よりもはるかに不安が大きかった。見事に完結した物語について、さらに語ることは蛇足にしかならないと。しかしそんな不安は杞憂に終わり、正直こんなに深みが増していくなんて想像していなかったので、若干の戸惑いと興奮と歓びが渾然としている今。
前作の力に頼ることもなく、新たな一本の物語として立っている、見事な続編の在り方。

前作で物語の軸であったケイトは完全に身を引き、アレハンドロとマットを中心に据えて、アメリカとメキシコの微妙なバランスを浮かび上がらせる今作。アレハンドロの過去が断片的に明かされながら、狂気に近い執念の源泉を垣間見る。

とある事をきっかけにアレハンドロと行動を共にする麻薬カルテルのボスの娘イザベル。擬似親子に見えるギリギリの距離感が絶妙で、二人の沁みついてじった警戒心が辛くもある。

一方、ふとしたきっかけによって悪の道に踏み入ってしまった少年ミゲルもまた、アレハンドロの進む道と交差し、物語はいよいよ第三作目への布石を置いて扉が閉まる。

構成が多層に重なって、より重さを増してきた文句なしの二作目。脚本のテイラー・シェリダン作の確かさがヤバイ!