初々しいカップルが観たら白目不可避な映画。
今作は、純愛系のキラキラ映画を観たいと思っている方には全くオススメ出来ない。
ましてや、付き合いはじめのまだお互いに手探り状態のカップルは、決して手に取るべからずな内容となっている。
しかも、今作はラブコメものの王道とも言える「格差恋愛」を描いた作品であり、そのうえ「しがないジャーナリスト」と「国務長官」という"堅気''な世界に身を置いた者同士の恋物語であるから、そんな筋書きであれば大抵の人は冴えない男が鉄壁の女に対して、不器用だけども情熱的にアプローチを試みる"健全"なストーリーを想像してしまいがちだが、今作にそれを望んで鑑賞してしまうと痛い目を見る事になる。
また、そもそも海外のラブコメは比較的に下ネタに走りがちな傾向にはあるが、今作はそんな中でも結構攻めている部類に入るだろう。
映画通なら「セス・ローゲン」が主演という時点でピンと来る方も多いとは思うが、まさか相手役に「シャーリーズ・セロン」を据えても、ここまで攻勢の手を緩めていないとは正直驚いた。
シャーリーズ・セロンのこれまでの役柄といえば、クールで強く美しい女性像である事が多かった為、彼女自身にあまりお下品なイメージを感じる事はないのだが、今作ではそんな固定概念を払拭するかのように、性にオープンにコメディエンヌとしての才能も遺憾なく発揮しているので、彼女のこれまでとは違う一面を見たい方は是非鑑賞してみてほしい。
それにしても、今回久々に海外のラブコメを鑑賞して思ったが、やはり日本のラブコメは他所から見るとかなり異色なのだろう。
まず、ここまで下ネタに対して閉塞的な日本は異常という他なく、もっと端的に言えば日本人って例外なく"むっつりスケベ"な人種だという事が、海外のラブコメを観るとよく分かるのだ。
本来、恋愛を題材にしたコメディを作るとなれば、性にまつわる失敗や苦悩に笑いを見出すのは必然であり、度合いにもよるだろうがそれをナシには語れない部分も多分にあると思う。
しかし、いざ日本のラブコメをイメージしてみると、若い男女が手を繋ぐ事にどぎまぎして、キスをするかどうかがあたかも最終目的かのような、悪い言い方をすればかなり幼稚な作品しか思い浮かばないではないか。
これも、"性欲=悪"のような陰気なイメージが日本人にはあるからに他ならず、その証明に"絵"なら話は別とばかりに、マンガやアニメになると途端にエッチな表現を捗らせる傾向が日本人にはあるのだ。
そこからも分かるように、日本でいうラブコメの本流は"二次元"の世界であり、まるで内弁慶の如くそのアクティブさを決して実写の世界には落とし込もうとはしないから、一層"生身の人間"と"そうでないもの"の間には深いギャップが生まれてしまったと言える。
そして、二次元とは"オタク文化"であり、オタク文化とは言うなれば"日陰の存在"であるから、そのイメージと性表現が密接に絡み合ってしまった事は、今の未婚率や少子化の上昇にも少なからず関わる不幸な結果と言わざるを得ない。
僕も、今のなんでも美少女、なんでも擬人(女性)化、なんでもエロ表現のマンガやアニメには嫌悪感しかない側の人間なので(なんか前にも話した?)この現状には非常に嘆かわしく思うところがある。
この現象は、言わば現実世界で抑圧されていった欲求が、形を変えて歪んだ結果ともとれるわけで、日本も例えば米国のようにもっと性に対して寛容でオープンな国であったならば、それらの捻じ曲がった性癖など生まれなかったのではないだろうか。
そう考えると、もっと日本の映画作品にも際どい下ネタがラブコメのジャンルに限っては必要だし、マンガやアニメよりももっと大衆的で間口の広い映画界こそが、性に対して笑える環境をもっと整え増やしていく事が、健全な男女関係の第一歩にも間接的に繋がるのではと考える。
それにはまず、なんでも規制、なんでも自粛の精神をやめて、適材適所というものに対しては、もっと許容範囲を広げていくべきであり、それにより今作のワンシーンである、彼女の事を想ってオナニーに耽る姿を盗撮されていたという場面を、キモいと捉えるか面白いと感じるかが変わってくるものと思うのだ。
ただ、今作の要素で肯定出来たのは下ネタの要素だけであり、その他のタトゥーやドラッグに対しての価値観の違いにはどうしても着いていけないものがある。
ましてや、大統領選を控えた国務長官という立場の女性が、ストレス発散という名目で売人からヤクを買い2回もキメるとかいうネタは、大麻すら違法薬物に指定されている日本人にとっては笑える要素には全く感じないし、それでハイになっている姿を見るのも気分がいいものではなかった。
こういう場面は、タトゥーネタ然り海外のブラックコメディにとってはあるあるネタではあるのだが、本場の人はこれを観てちゃんと笑えるシーンになっているのか疑問である。
という事で、今作はそういった文化の違いがエグすぎて、総合的には理解出来ない共感性の薄さが邪魔をしてしまった。
やっぱり、個人的に海外の大人向けコメディはここが高い壁になっているようだ。
しかし、気のおけない間柄の男女であれば、そんなところも含めワイワイと観れる作品ではあると思うので、もっと距離を縮めたいと考えている方ならば、この映画は良い潤滑油になり得るかもしれない。