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グッバイ、リチャード!のJINのレビュー・感想・評価

グッバイ、リチャード!(2018年製作の映画)
4.1
今のタイミングでこの作品と出逢えたことに感謝する。
と言うのも、自分が本気で「死」と向き合う必要に迫られているタイミングだからだ。
自分の死もそうだが、家族の死、職場の人間の死というものを身近に意識しなければいけないという危機感。
上辺ではわかっておきながら、事態を深刻に捉える恐怖から逃げていた。
なので、今までにたくさん観てきた余命モノとは違った感覚で観ていた。
今まではどこかで他人事にしておきたかったからだろう。

劇中で、ジョニー・デップ演じる余命半年の英文学教授の言葉の一つ一つが刺さる。
まさに名言だらけ。
それも「人生のほとんどにおいて間違っていた」と死を間近に控えてる人間の口からだと説教くさく聞こえない。

「死を身近な友とするんだ。それでこそ我々は残り少ない人生を一瞬でも楽しむことができる。そして最も大事なのは善く生きること。善く死ねるように」。
ほとんどの人達は本当の意味でみんないつか死ぬと思いながら「死」と付き合っていないのではないだろうか?
だから一瞬一瞬沢山沢山無駄にしてしまう。
まあそれも含めて人生だけど。

他にも印象的だったのが、「大人とは惨めさを飲み込めるかだ。自分のではなく、他人の惨めさを」と言う言葉。
その通りだと思ったし、今まで自分はどれだけ自分のことばかりにしか目をやっていなかったのだろうかと反省した。
自分の惨めさばかりを考えていたような気がする。
だからこそ、他人の惨めさを飲み込むことにも長けているとも言える。

いずれにせよ、自分がこの身で事故や災害などで死にかけたり、余命宣告をされてその痛みや苦しみに負けそうにでもならない限りは本当の意味では「死」を間近に感じられないだろうとも思う。
ただ、自分が死んだり、特に家族や、身近な誰かが死んでしまうのを考えるととても怖い。
その感覚があるうちは不意に自ら命を絶つようなこともない気がしている。
思考できなくなるのが一番ヤバい。

久々にジョニー・デップの作品を観たけど、幾つになってもシブいよなあ。
何なんやろう、あの男の色気は。
しかも今作では英文学教授役やから言葉の一つ一つに知性と哲学が感じられるのが最強。
「凡庸さに屈するな」と若者に向けた言葉も力強かった。
ラストのあの顔も何となくやけどわかる気がした。
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