もるがな

アナと世界の終わりのもるがなのレビュー・感想・評価

アナと世界の終わり(2017年製作の映画)
3.9
ゾンビ×ミュージカルの青春映画。ゾンビ出現で男子はテンション爆上がり、女子は現実的に容赦なくブチ殺し、ついでに世界は終わりを迎えていく。最初はキワモノかと思ったが意外と真っ当な作りで、生き残り組と脱落組の命運はわりとシビアに描かれている。コメディ要素は強いものの、ゾンビが単なるネタ要素でなかったのは個人的にポイントが高く、またミュージカル要素のクオリティが抜群に高かったのも素晴らしかった。個人的にミュージカル映画はストーリーパートとミュージカルパートの切り替えが難しいと思っているのだが、この映画は無理のない範囲でシームレスに繋がっており、ミュージカルスイッチのオンオフのアイディアには舌を巻いてしまった。

SNSの発達によってゾンビとの関わり方もガラッと様変わりしており、避難情報がSNSで共有されたりセルフィー世代特有のゾンビとのコミュニケーション方法などの小ネタも面白い。SNS世代特有の孤独感や共有、居場所といった要素が隠し味のように効いているのも見事。

最初こそネタ要素が強くギャグもキレッキレで笑ったものの、ストーリーが進むにつれてタイトルの「世界の終わり」をひしひしと実感する。それは子供から大人へのイニシエーションであり、また容赦のない現実に時に膝を屈して折り合いをつけることでもある。現実はひたすらに無慈悲で甘い未来は確定ではなく、現状に甘んじた瞬間に取り残されてしまう。ある意味でゾンビなのは若者のほうであり、ハードな青春の中で必死で足掻くことで人間の体温を感じる物語でもあるのだろう。なかなかの良作です。
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