がんがん

バイスのがんがんのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
3.0
「保守派もリベラル派もよくわからないし、そんなことよりアベンジャーズの新作が楽しみな人間」な自分はエンドロール後のあのシーンで変な笑いが出た。あー、これ自分のことだわ…と。

アイロニーとメタファー。

あらゆるシーンでそれらが描かれ、背筋がぞっとした。たぶん監督が仕掛けた物の半分も気づけてないんだろうなぁ、自分は。気づけてないことにもぞっとする。

疑似餌で標的を釣る。疑似餌は兵器、テロリスト、お金、国民。

緊張とストレスによるブッシュJrの貧乏ゆすりと、爆撃に恐怖するイラクの民間人の足の震え。

胸糞悪くなってくる新鮮な食材を扱ったメニューばかりの晩餐会。

不安定にギリギリの所で積み重なっていたけど、ついに崩れたティーカップの塔。

カールというストーリーテラーから移植された心臓、つまり国民の命。ごくごく一般的なアメリカ国民達の命。

そして最後に、君たちが私を選んだ(だから責任は国民の君たちにあるんだぞ、わかっているのか?)というメッセージ。

一番印象的だった、副大統領になってくれとランチのシーンで釣りの情景が挟まれて。一見笑いどころなんだけど、傀儡政権の始まりですよってことで、この後大勢の方の命が奪われる流れがあるから、一概に笑ってられない。

先日観た記者たちでは「戦争へ送られる側」の話、バイスでは「戦争へ送る側」の話。あちら側とこちら側両方の面で9.11からイラク戦争の流れを理解することができた。本当に勉強になりました。

そういえば開始30分強で、あれ?なんかこれ終幕の雰囲気だなとと思ったら唐突にナレーションからエンドロールが入り、この映画は二度始まる的な構成でカメラを止めるな、みたいだったのも面白かった。

この作品はチェイニー本人に製作許可は取らなかったそうで。事実を、描きたいことをいれるなと本人から言われればいれることができなくなってしまうので、勝手に作ってやったとのこと。

うーん、凄すぎる。

冒頭から製作意図として、これは事実ではある。我々が調べられた限りの真実である、という旨が書かれて監督の確固たる意思をひしひしと感じました。

ちなみにチェイニーのボソボソ声は完全にダークナイトのそれですよね。

ギャラクタスってのはマーベルのキャラみたいですけど、DCのキャラにしといた方が面白かったのでは!
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