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愛しのアイリーンのyumeayuのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
4.0
クソババー シネッ!

「ヒメアノ〜ル」「犬猿」に続き、またもや吉田監督がやってくれました!
少子高齢化、過疎地域の後継者問題、性差別、外国人労働者など…現代の日本社会が抱える様々な闇を縮図化させたような作品でしたね。
そして、やはりというか、相変わらず容赦ないですねー(笑)。

前半はまるでブラック・コメディ。
異国の地で四苦八苦するアイリーンの暮らしぶりは、日本に住んでいる外国人の現実そのもの。
木野花演じるツルがアイリーンをカタコトだから頭の中空っぽみたいに扱うところはすごくリアルでしたね。しかし、アイリーンも言葉が通じないことをいいことにフィリピン語で文句を言ったりしてるのも面白かった。

後半は一転してバイオレントな展開に。
いわゆる"田舎ホラー"と化します。
安田顕演じる主人公岩男とアイリーンはある出来事を経て、初めて結ばれます。
「ヒメアノ〜ル」でもそうでしたが、今作でも"性"がトリガーとなって物語が急転します。
タガが外れたように豹変する岩男。命の危険を感じるのと同時に性欲がさらに増幅し暴走する。のらりくらりと生きていた岩男が、まるで性欲が生きる衝動になっているかのようだった。

どんどんとエスカレートする岩男の行動はとても擁護できるものではなかったが、人を愛したことがない故に愛し方がわからない不器用な男の顛末と思うと、僅かながらも同情したくもなりました…。

岩男をはじめ、母親のツルなど、今作に登場するキャラクターはどれも共感し難い嫌なやつばかり。
しかし、どのキャラクターも時代のせいだったり、環境のせいだったり、みんなそれなりに理由があって素直に生きれない奴等なんですよね。
だから、なぜか心底嫌いにはなれない。
個人的にはさりげなく名台詞を吐くフィリピンパブのマリーンが影のMVPでした!

最後にちょっと気になるところと言えば、今作は一概には言えないけど、男女の恋愛や結婚に対する価値観の差を感じました。
ある意味すごく男性目線の作品なのかもしれません。男の身勝手さがすごく感じられました。
一方で、今作に登場する女性たちは前時代的で偏った描かれ方をしているように思えました。
作品の狙いなのかもしれないけど、女性の目線でみると怒る人もいるのではないでしょうか。
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