Aya

クリシャのAyaのレビュー・感想・評価

クリシャ(2015年製作の映画)
3.5
#twcn

なんかビジュアルのイメージから、このばばぁクリシャが呪い襲い殺す映画かと思ってたら、全然違ったw

洗濯機の音をBGMに裸のクリシャのアップで始まる。
顔はリラックスしているとは到底いえない。

これをポスタービジュアルに持ってきたのすごい勇気ですグッチーズ・フリー・スクール様。

前半はサンクスギビングの準備や久しぶりの再会を果たす家族がワイワイしていて、関係性などふむふむとかなり面白い。

てか楽しい。

のが!
上部だけだったとはぁ!

私もクリシャも騙されたよ!

てかクリシャのように身に覚えがない分、私の方が騙されたよ!

家族の話ですが14人もいるので簡単に家系図準備して見た方がいいですw

サンクスギビングスに招かれ、姉と妹の2人と家族が12人住む大豪邸を訪れた60歳くらいのクリシャ。

彼女がこの大家族の家にたどり着くまでが長い。

きっと初めて訪れるのであろう、何度も家を間違え雑に荷物を引きずりやっと辿り着くと気持ちよく迎えてくれる姉妹の夫たちや甥っ子姪っ子、お嫁さんに新しく生まれた赤ちゃん。

そこに自分と同じようにゲストとしてクリシャの息子トレイもやって来る。

彼は一応荷物は運んでくれるものの、この中の誰よりも血のつながりの濃い母親のクリシャとハグやキスは愚か目を合わせようともしない。

ちなみにクリシャもクリシャで引きずる大荷物をトレイ以外の誰にも触らせない。

なにかあるぞこの「家族」

最初はほんとサンクスギビング映画って感じで大家族が集まって感謝祭の支度をしたり久々の再会を喜び合ったりするから楽しかったんですけど・・・。

よく考えたらクリシャってこの大家族の一員でもこの家のゲストじゃん。
なんでゲストがthanksgivingの七面鳥をメインで調理してんだよ!
クリシャは七面鳥を調理するのが得意なのかな?
(ちなみにこの七面鳥ってシャポン??)

わたしが生きてきた人生で見たこともないほどでかい鳥をガン!ってシンクいっぱいにいれて彼女1人で内臓を引き摺り出し、詰め物の生野菜を用意する。

料理の隙をついてバスルームに駆け込み小型の手持ち金庫から薬と服薬メモを取り出し口の中へ。

なんか・・・すごいねw

精神科系の薬っぽいけどなんで金庫?
小さい子供のいる家に行くから金庫?
それとも見られたくなくて金庫?

ちなみにこの時、金庫と一緒にクリシャが雑にジップロックを洗面所に持ってくるんですけど、旅行サイズの化粧品とかアレやソレや的な洗面道具入れてるんですけど、えっ?飛行機できたの?!って一瞬思ったw
(ワンチャン、レンタカーかもね?!)

一応、お嫁さんや妹たちが料理を手伝ってくれようとするがクリシャは無意識に何も手伝わせない。自分の独壇場、といった様子。

1人で黙々と野菜とお肉を準備し七面鳥の中へ詰める料理の場面はカチャカチャという一定速不穏なBGMが彼女をせきたてる。
手際良く完成させオーブンへ。

他のみんなは洗濯したり、ディナー席の準備をしたり。

なんかトレイも含むガキどもがなんも手伝わんと腕相撲とか酒飲んだり犬追いかけたりや遊んでばっかりなの子供だから?男だから?

クリシャは思い切ったように酔っぱらった妹の夫にいちゃもんをつけられながら、テキトーに流して息子のトレイと話をしようとする。

が、彼は目指していた映画監督を諦め大学で企業経営を勉強しているようでそれを本人から聞いたわけでもないが、あなたには才能があるんだから自分の信じる道を歩んでほしい、と縋るように話すがまったく聞く耳持たず、ウザッて感じでやはり目を合わさない。

言うてる間にクリシャのママンもやってきた。

この家のゲストはクリシャとトレイと母親。

しかし明らかにクリシャより手厚く出迎えられており、みんなに歓迎され愛され愛しているように見える。

年相応に認知症が進んでいるが、この私も覚えられない大家族のことを説明すると思い出してくれる。

ただ1人を除いて。

さっきは自分が主役だったのに、その座を奪われたクリシャはたまらないといった風にワインのコルクを必死で開けようとする。

えっ?!

そのハサミ眉毛切るやつじゃないの?!しかもコルクを引っこ抜くんじゃなくて押し込んで開けるって、あ、新しいww

無理やりワインを流し込む姿が痛々しくも「ソレありやん」と思ったw
そして一息ついて七面鳥の様子を見に行く。

居た堪れねえ!

家の大きさの割になぜかめっちゃ狭いキッチン、ダイニングで14人が楽しそうに誰彼ともなく料理や飲み物を準備する。

それぞれ自分の役割が決まっているのか自然に動ける大家族を見ているととてもいい雰囲気。

ディナー用に赤いドレスで着飾るクリシャは美しく、始まるサンクスギビングのディナー。

その時!

やっと焼き上がったクリシャ作の七面鳥があ(T_T)

手伝ってもらわないから!

ただでさえ1人で持てなかったのに、オーブンで焼いて軽くなるわけないやんか!


いや、七面鳥に関しては表面洗えばええやん。
食べれるって!せっかくの七面鳥だよ?!もったいない!
※七面鳥を洗えばええやんというのは貧乏人かフランス人の考え方ですw

しかもいきなりめっちゃ具合悪そうやし、クラクラでまともに立てない。
それを見た姉妹に1発で酒を飲んだことがバレる。
どうやらクリシャは断酒中のよう。

大家族は心配とがっかりを隠さない。
何度目ですか?といった感じ。

クリシャのせいでせっかくサンクスもギビングされず台無し。
せっかく迎えてくれた大家族にストレートに迷惑をかける。

唯一の息子のトレイは平静に味方をしてくれず、姉夫婦に相談事を持ちかけている始末。

気を取り直して(開き直って?)皆のやり直しディナーへ顔を出すも、シャットアウトで家族のディナーに混ざれないどころか、もうとりつくしまもなく別室へ拉致監禁。

広い豪邸に飾られた数々の家族写真や肖像画の中に自分の姿はない。

クリシャは「家族」なのか?

だってこの13人の家族は完璧なんだもん!
完璧を求めすぎだもん!

1度失敗した人間には立ち直るチャンスを与えるが、2度目はないぞといった雰囲気。

最初はめちゃくちゃフレンドリーに快く迎えてくれたのは上部だけ。

血の繋がった家族でさえ「ちゃんとしていない」人間を排除してでも「完璧な家族」を求めている。

この段階で2度失敗した「欠陥」のあるクリシャは「家族」ではない。
彼女はこの完璧な家と完璧な家族の一員ではないと言われてしまう。


唯一味方の姉は他のみんなが反対する中でもクリシャの更生を信じてこのサンクスギビングに招いたのだ。
これはクリシャへのgiving、やり直しのチャンスだった。
しかしクリシャはそのチャンスすら台無しにした。

クリシャはクリシャでこの幸せそうな大家族、この大きな家に幻想を抱いていた。
ここにくれば家族の一員になれる。
全てうまくいくという魔法を信じていた。

でもそれは彼女の努力無くしては得られない。
息子への許しへの努力はまったく上手くいかなかった。

愛や信頼や血の繋がりだけでは助けも理解もできないこともある。

もう!クリシャ、過去になにしたのよ?!

追い詰められるクリシャと対比して描かれる生まれたばかりの赤ちゃんローズとその母のオリヴィアの美しい姿に自分の若かりし日を重ね、さらに憤る。

いつ、どこで、なぜ、間違えてしまったのか?
その怒りを息子のトレイに向けてしまうクリシャ。
台無しになるthanksgivingのディナー。

これは裏切りを描いた作品だ。

クリシャは皆を裏切った。

皆もクリシャを裏切っていた。

とても悲しいお話。
でもこれが終わりではないと思う。

二度あることは三度ある。
悪い意味でもいい意味でも。
だからあなたにはもう一度チャンスがある。

負けないで。
あなたは紛れもなくこの家族の一員なのだから。

トレイとの関係修復は時間がかかりそうだ。
(だからなにがあったのよ?!)

でも諦めないでクリシャ。

あなたは強い。

もちろんアルコールや薬に頼ってしまう弱さもあるが、愛する息子のために乗り越えてほしい。

楽しそう⇒崩れてゆく⇒地獄⇒希望といったすべての過程がひと家族の1日に無理なく凝縮されており、長編初監督作としては手管すぎます。

この後の「イット・カムズ・アット・ナイト」も家族と信頼を描いた作品ですが、共通する部分が多く閉塞や危機という一体感がない分こちらの家族関係の方がもろい。

やはり世の中には必要悪ってあるんだな、と思った。
えっ?
クリシャが悪?!
いや、クリシャの中にある隙が悪なのです。
そしてその隙はきっとこの14人の家族全員にもあるはず。
ふふふ。


日本語字幕:上條 葉月
Aya

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