じょにー

ヘレディタリー/継承のじょにーのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.9
これはミッドサマーよりわかりやすいと思う。露骨と言った方がいいかな。
何がわかるって、アリ・アスター監督のことがです。映画による人生からの解放。そんな願望を感じる。彼に夢があるとするなら、解脱なんじゃないかなあ。
アリ・アスター、やっぱ「本物」なんよ。

とりあえずミッドサマーに勝るとも劣らない最悪フェスティバルだったので、そこはテンション上がっちゃった。例に漏れずしかめっ面維持しすぎて眉間ムキムキになりました。
鑑賞者の心をオーバーキルしてくる類のフェスなんですけど、こちらはまだ楽しむ余地がギリあるかも。嫌な脅かしは少なめの本格的なホラー。
母アニー役のトニ・コレット、長男ピーター役のアレックス・ウォルフの演技が特に凄まじくて脱帽。タイトルは腑に落ちすぎてちょっともったいない気もした。

結局この映画で起こることは、あ〜それおもしろくなるの?っていうアレなんですけど、そこを本筋にしてないというか、もうそれどころじゃないっていうか。そこがおもしろいですよね。
少なくともメタ的にはヒューマンドラマじゃないかな、なんて。
なぜならアリ・アスター作品は彼を人間観察するための手段みたいなところがあるので。しかし観察に入れ込むとやられるタイプの人が確実にいると思うので気を付けられたし。

エンドロールの先も恐らく恒久的に続く閉塞的な生。それを思うとなるほど、まさしく完璧な悪夢。
超自然的なそれだけではない上質な恐怖。考えれば考えるほど絶望するための真っ暗な余白が広がる、素晴らしきホラー映画。
じょにー

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