じょにー

ゴジラ-1.0のじょにーのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.6
素晴らしかった。凄まじかった。
嫌なサプライズを心配してる人、全然大丈夫です。今、ゴジラの顔を直視するのが怖いから。シリーズ本国への上がり切ったハードルを叩き潰す一作です。

1945年、敗戦国となった日本という世界観。建築や小物、衣装、果ては言葉遣いまで、画面中のディテールの隙の無さは、山崎貴監督のフィールドに連れ込まれたと言う他ない。
美術もVFXもシリーズ他作品と比べるべくもない完成度。その上で日本がゴジラに蹂躙されるあの光景、あの演出、あの演技は、戦争を経験していない自分の心も軽々と抉っていった。

平成シリーズから、シン・ゴジラ、ハリウッド版GODZILLAと多少は見てきたけど、ここまで鮮烈な恐怖と絶望を抱いたのは初めてかもしれない。
ゴジラには、偶像、英雄、暗喩、史実、興行、民意、色んな顔がある。観る人がどんな顔を、どこまでこだわって求めているかで意見はもちろん変わると思う。今回目の当たりにしたのはまさに自分が求めていた側面のひとつだったし、これほどの音響と映像のキレを以ってして浴びせられた衝撃はちょっと忘れられない。
TOHOの轟音上映で観て大正解。最高だった・・・。

一方で、やや単調なドラマと、肝心な所で先が読めてしまうシーンがあって気になった。まあこの設定で単調じゃなくせなんてのは無理な話にしても、後者に関してはあからさまに見えたものがわざとじゃなかったのでなんならミスリードされてしまった。あと「◯◯◯◯!?」言い過ぎ。
ストーリーを見ても、典子は冷蔵庫の女すぎて存在意義がもう少し欲しかったし、最後に明子を軽く置いてきぼりにするのは違うよね。
特攻や戦争に対しての向き合い方にしろ、やっぱり敗戦後ということで現代と価値観の違いがある。今観ている人間のカタルシスにノイズなく繋げるのはどうしても難しいだろうなと。この辺りを無視したくはないけど一個の作品にそこまで多くの責任を負わせるのも酷かなと思うところ。

ひとまず、ここまで一方向に突き詰めたものをつくってくれたことには感謝したい。個人的にシン・ゴジラで見たかった視点を見られたのも嬉しかった。
近年の並々ならぬシリーズのクオリティに競り負けず、今までにない余白を穿ったことに拍手。また新しいゴジラが生まれた。
じょにー

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