マヒロ

ヘレディタリー/継承のマヒロのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.5
ホラー映画は、その映画の中に潜むテーマや象徴が明確にあるものほど恐ろしさも増してくるものだと思っているんだけど、この映画はその極北にあるような作品で、監督の何か愛憎入り混じったような感情がぶちまけられたある意味エモーショナルな作品だと思った。
ホラーとしての映像作りもきちんと為されていて、要所要所でハッとするような恐ろしいカットがあって、真っ当に怖かった。

家族との関係性の不和をホラーとして描いたものといえば、邪悪な御伽噺のような『ウィッチ』や、神経症的な厭さがあった『ババドック』なんかが思い浮かぶけど、今作は更に一歩踏み込んだおぞましい出来事が起こり、そこから一気に家族が崩壊していくというのが妙にリアル。
今作は監督が体験した家族間でのある出来事にインスパイアされて創り上げられたという噂を聞いたけど、「この家族に産まれた時点でもう逃れられない地獄が待っていた…」という話は、よっぽどヤバイ出来事が監督の身に降りかかったんじゃないかとしか思えないエグさ。

ミニチュアハウスを巧みに使った不思議なカメラワーク、さり気なくそこに"何か"がいる様子を映すという一番嫌な幽霊の現れ方、そして何より一番最後の大狂乱の凄まじさなど、映画としての完成度も素晴らしいと思う。あのめちゃくちゃ感は『エクソシスト』三部作全部のラストシーンを全部詰め込んだみたいな凄味があった。

お母さん役のトニ・コレットは、キッズ向けホラー映画の『クランプス』でも一人だけ迫真のビビリ演技を見せていたけど、こちらではそれを遥かに上回る、最早顔芸レベルの凄まじい恐れおののき様だった。何となくブルース・キャンベルを彷彿とさせるハジけっぷり。

近年のホラーは、登場人物をあるルール下に置いて、そのシチュエーションで怖がらせるというものが多くて若干食傷気味だったんだけど、今作は久しぶりに真っ当なホラーという感じで大満足だった。

(2018.79)[30]
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