もるがな

ヘレディタリー/継承のもるがなのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.9
不穏な空気のみなら超一級品。冒頭から最後に至るまでのゾワゾワした空気感は飽きることなく、最後まで静かに見入ってしまった。お化け屋敷的なジャンプスケア描写はそこそこで、期待しすぎるとアテが外れるが、予期してなければそれなりに刺さるため、何度か飛び上がりそうになってしまった。シンプルな、コッ……コッ……がなんだかんだで一番恐ろしく、見終わった今でもやけに耳に残ってしまう。

シンメトリーな構図に挑戦的かつアクロバティックな冒頭の美しさに愛を飲んだが、全て終わった後となるとその精緻な構成に舌を巻いてしまった。オカルティックでありながらもその本質は非常にロジカルであり、正体不明の恐怖と魔術的な論理性こそがこの映画最大の持ち味だろう。恐怖のタネについて怯えるか否かは人それぞれで、個人的には共感しかねる部分もあるものの、作品全体の目的に特化した美しさに見惚れてしまったほで評価は甘め。余談だが、この監督、どうやらホラーだけでなくコメディも撮りたいらしいが、本作を見る限りその才覚は十分過ぎるほどにあると思う。
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