KANA

5時から7時までのクレオのKANAのレビュー・感想・評価

5時から7時までのクレオ(1961年製作の映画)
3.5
ヌーヴェルヴァーグの中でもセーヌ左岸派の女性監督、アニエス・ヴァルダの代表作。

コリアンヌ・マルシャン演じる主人公クレオが「癌かもしれない」と思いつめながら医者から検査結果を聞くまでの夕方2時間、パリの街を歩き回る。
ついちょっとしたことではしゃいだり、かと思うと急に落ち込んでしまったり…。
初夏のパリの風景の中でクレオの心の揺らぎや、客観的には存在感みたいなものを生き生きと描く。
検査結果に対する不安、治療がどうなるかの不安、歌手としての仕事の不安…みんなひっくるめて、現在という時間に出会う人々、その時その瞬間の自分の有りようこそが現在の生。
ヴァルダはクレオのそれを時間の飛び越しなしに、映画の中と同じ夏至の日にリアルタイムで、しかも脚本の順番通りに、まるでドキュメンタリーみたいにフィルムに収めている。
ヒロインが男性に対する他者として現れる、男性監督作にありがちなパターンとはまた違って、あくまでもクレオという女性の主観こそがこの作品のキモのような…。
そして、あちこち道端で撮るっていうスタイルがいかにもヌーヴェルヴァーグ。
気取らないパリの日常風景はもちろん、冒頭のタロットカードシーンのみカラーで、あとはモノクロという使い分けもオシャレ。
映画内映画にカメオ出演しているゴダール&アンナ・カリーナの寸劇もコミカルで可愛い。
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