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パッドマン 5億人の女性を救った男のmaverickのレビュー・感想・評価

4.7
インドにおいて安価な生理用ナプキンの製造に成功し、女性に多大なる貢献をした実在の人物を描いた物語。『パッドマン』というユニークなタイトルと、近年の躍進めざましいボリウッド作品ということで期待を持っての鑑賞。想像した以上の素晴らしい映画だった。鑑賞して驚くのは、インドという国の問題点。映画としてのクオリティ以外にも国際的に急速に成長している印象のインドだが、様々な問題を抱えている国でもある。『ダンガル』でも触れられているような女性の自由のなさなど、古くからのしきたりに今だ縛られている部分が多い。本作においても時代錯誤だと感じる事柄には驚きで、女性の月々のものは忌まわしいものとされてタブー扱い。男と女の役割が完全に分かれているが故であろう。生理用ナプキンが売ってはいるものの、非常に高価で一般の人々は気軽に買えない。インド女性のナプキン使用率は全体の10%足らず。多くの女性が不衛生な布切れを使用しており、感染症になることも少なくない。主人公も結婚するまで女性のこういう事実を全く知らなかった。愛する妻の苦しみを救ってあげたいという一心で立ち上がることになる。自分は当初、主人公と妻が二人三脚で力を合わして道を切り開く物語だと思っていたのだが、なんと妻すら主人公の行動を激しく非難する。町の住人だけでなく、親戚や自分の親までも。安価なナプキン作りに奔走する主人公を理解できないだけではなく、終いには気が狂っただの呪われただのと罵られる。それでも信念のもとに前進し続ける主人公の凄さ。いつの時代においても、なし得なかった偉業を達成する人というのは常識にとらわれない考え方を持っているもの。世の中や周りに習って行動する普通の人から見れば変人と言ってもよい。幕府をなくし日本を大きく変えようとした坂本龍馬や、黒人奴隷の解放を行ったリンカーンなど。間違ったことに疑問を持ち、それを変えようと全力で行動する。非難されようが信念を貫く勇気のある人。本作の主人公も正にそういう人間。また彼は人間的にも素晴らしく、苦しさや貧しさから多くの人を救いたいと思う優しさを持っている。しかも男性であるのに女性のことを深く理解しようとし、女性の権威を高めたいという考えを持っている。それらが全て元々は愛する妻を救いたいという気持ちからなのが素晴らしいじゃないか。お金儲けのために事業を興しているわけでもない。彼が人々に向けて演説するシーンは本当に感動した。計算されたスピーチではなく、彼が心から思っていることなのがしっかりと伝わる。嘘偽りなく、そして彼の人間としての素晴らしさが表れた言葉で、ぐいぐい引き込まれた。こういう人がもし選挙で立候補したら素直に応援したいと思うなぁ。インド映画として自国の変えるべき部分にフォーカスを当てた作品性が素晴らしかった。歌も躍りもあって結構コテコテなインド映画でもあるのだがそこがインドの良さであり、良い部分と風穴を開ける訴える部分とが見事に調和している。重たすぎず、笑って泣けて楽しめて、映画として綺麗にまとめられた完成度の高さ。ボリウッド確実に来てますね。インドのスーパーヒーロー『パッドマン』。日本よ、これがヒーローと呼ぶべき男だ!
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