ベルサイユ製麺

ペンギン・ハイウェイのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ペンギン・ハイウェイ(2018年製作の映画)
3.6
これは泣いてしまう。
…べ、別に感動してるんじゃないやい!
いや、マジで。これは単なる条件反射です。

アニメ映画は次々と新しい才能が現れて良いですね。この監督の事は存じませんでしたか、今作は一部で大変評価が高かったように思います。


スーパー利発な小学生男子アオヤマくん。研究大好きで、いろんなテーマで研究ノートを作ってる。みうらじゅんさんのエロ・スクラップみたいだな…。
アオヤマくんは、かかりつけの歯科医院の(おっぱいな)お姉さんに勝手に操を立てている。(←男には使わない表現ですか?)
ある日の登校中、…目の前をテテテと駆け抜けていったアレは所謂ペンギンではなかろうか?
なんで?気になる!…と…気がつくと街はペンギンだらけだ!
気の合う学友のウチダくんと放課後のペンギン調査。気がすむまで調べるタチなのだ。ふむふむ。
①このペンギンは物を食べない。
②このペンギンは突然ガラクタに変身する。
③ペンギンは… … …
…故あって自動販売機ごっこをしていた、カンカン照りのある日、歯医者のおっぱいお姉さんが、とうとう見せてくれた!一番見たかったモノを!お姉さんが、そう!ペンギンを、作るところを!!…⁈
以降物語は、おっぱいお姉さん自身もよく分かってないペンギンの秘密、(多分アオヤマくんより利発で大人な)女子生徒ハマモトさんが見つけた、森の中の草原に浮かぶ“海”の謎などを巡るジュヴナイル冒険譚で、こりゃもう成長痛で膝ギシギシの乳歯グラグラでございますぜ!
…良いっすね。先ず絵が良い。他の(何とは言いません)より好みです。あと、アオヤマくんのキャラクターがとっても愛らしい。反面、彼以外は相対的にキャラが薄い気もします。…声優に一般俳優を起用するのは単発系劇場アニメでは定番化してますが、プロパーのアニメファン・声優ファンはどのようなお気持ちなのでしょうね?テレビ格闘技で芸能人が試合する時みたいな、“まぁしょうがない”感ですかね?
…で、早々に白旗を上げますが、ストーリーはよく分かりませんでした。筋書きはまあ理解出来るけど、なんでペンギンなのか、とか“あっち側”がどういうルールの世界なのか、とかは皆目見当がつかないし、実は興味も無い。自分はアニメーション特有の物語内だけで作られて現実とコミットすることの無さそうな謎とか裏設定の類いに対してとっても不感症なのです。
…でも、面白いとは感じた。キャラ萌えとかしないし、出来事一つ一つにも然程心は動かなかったけど、全体としては楽しい。
自分が感じた楽しさの根源は、恐らく子供の頃の、夏が他の季節の2〜3倍の長さに感じられた日々の記憶や万能感、それらを引括めた“気分”によるのだと思います。別に利発でも無ければ今ほどおっぱいが好きでも無かったけど、ただ用水路を泳ぐベタを眺めてたり、夕方コウモリが飛び交う中を自転車で走り回った思い出は何ものにも変えがたい。加えて言えば、今よりずっとアニメーションが好きだった。とりわけ夏休みに劇場で見るアニメーションには心を掴まれまくったものでした。
だから、それらが合わさったこの作品は否応なく惹かれてしまうし、それにジュブナイルの終わりの予感なんてスパイス効かされたら抵抗のしようが無い。そりゃあ泣く。でも、別に作品単体で特別どうとか思ってない。正直、この絵のペンギンが殊更可愛いとすら…。
この作品に限った事では勿論無いのですが、主人公が男の子なのって、女性にとってはどんな感じなのでしょうね?自分は、女性が作った、女の子主人公版も見てみたと思いました。当たり前ですけど、(というか寧ろ)強制的な成長は男の子の特権では無いですよね。
…実はその辺りがメインテーマかなと、思わなくも無い。

まあ何しろ泣かされてしまったし、もう石田監督の名前はしっかりインプットしました。先行するポスト×××を蹴散らす活躍を期待したいですね。いつか、自分が二度と『ビューティフル・ドリーマー』を観たいと思わなくなる様な傑作を生み出して欲しいです。