めしいらず

母さんがどんなに僕を嫌いでものめしいらずのネタバレレビュー・内容・結末

1.6

このレビューはネタバレを含みます

たとえどんなにひどい母親像であっても子供は母を愛するし(憎悪もその裏返し)その愛を本能的に求めてしまう。母さんが辛く当たるのは僕が駄目な子だからと自分を責めてしまう。主人公はそんな自分をおどけながら貶めてバランスを取ろうとする。それに母さんだってダメな元夫やダメな母親の被害者。だから僕が頑張って母さんを立ち直らせてみせる。親子の負の歴史を断ち切ってみせる。友に支えられた彼の一方的な頑張りで母子は和解を果たす。実話ベースの原作の映画化であるらしい。でもこの中で描かれているのはあらすじを補強する程度の内容である。どの登場人物にもリアリティがまるでなくペラペラな書割のよう(存在感がない父と姉など最たるもの)。個々人の人物像を裏付けるディテールやエピソードがなく、ただ与えたられた役割の駒として配置されているだけだ。その埋め合わせのように説明的な台詞やナレーションが入るのも白けること夥しい。それにこの母親には彼女の背景を鑑みても息子を愛せない葛藤や屈折が全然見えてこない。そのせいか二人の和解の過程が嘘っぽくしか見えないのだ。ひどくありきたりでご都合主義な設定(母の病気や親切なばあちゃんの死など)もこの手の雛形に則って予定通りに進行していく。小手先で楽をして泣かせてやろうと言うような浅慮にも見えてしまう。ここまで内容が薄いならおそらく母と息子と舞台仲間の三人だけでも成立しただろう。個々の演技は悪くないのにそれが全然生きていない。
めしいらず

めしいらず