今泉映画は腹が減る!
愛がなんだ以来の今泉力哉作品。
前回同様、人と人が腹を割って話すシーンでは必ず食事シーンになる。
そして一回は必ず料理を上から撮ったショットが挟み込まれる。
娘が出ていくシーンで、ポトフは煮込んだままで、仲直りして食べる。
三浦春馬と多部未華子が2人で食べていたシーンが続いた後に、食パンを1人で食べるシーンにジーンときてしまう。
今泉映画に食事シーンが多いのは
食べ物を食べるシーンに人間らしさが色濃く出るかららしい。
人の縁やつながりを描き続けてきた
伊坂幸太郎ワールドに今泉さんの絵のタッチが加わり良い空間だった。
エキストラや端役も生き生きとして、画面で生きており、特に学生たちの良い意味での顔の汚さがリアルでよかった。
ラストシーン 2人の前をエキストラに横切らせる演出はテレビ屋ドラマ屋上がりの商業監督には決して撮れない画だろう。
山戸結希監督や今泉力哉監督ら自主映画の才覚たちが次々と上の舞台でデビューしていって嬉しい。
彼らが各ステージで培った自らの演出や画力が全国上映でも観れることに感動。
劇中のボクサーのように、映画監督や小説家もどこか知らないところで、誰かの人生の糧になっていたら嬉しいんだろなあ。
加えて演出がとても細やかで今泉監督らしい。
三浦春馬がバスを追いかけながら、本来の目的を忘れ、こけた子どもに優しく話しかけるシーンに思わず、ホロっとなってしまうし、
手話で話しかけるのも彼の積み重ねてきた10年を感じる。
多部未華子がかぶる帽子には
「北仙台警備保障」の文字。
時期も平成20年。
偶然会うときも決して「あの時の〜」とは言わせずに、
「立ち仕事は大変ですね」のセリフ。
父親を認めたことを暗示する
「モノマネ」のシーン。
良い時間を過ごすことができた。
目を細めて笑う多部未華子が好き。
主役より濃すぎるサンドイッチマンに笑ってしまった。
存在で笑わせられるのだからやっぱり一流の芸人さんだ。