ベルサイユ製麺

華氏 451のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

華氏 451(2018年製作の映画)
3.0
原作、レイ・ブラッドベリ!そう、あの“レイ・ブラッドベリ大全集”で知られる(←酷え)SFの大家でございます!タイトルの“華氏451”とは、温度…確か黒豆がシワにならずに煮れる温度だかなんだか、とにかく温度の事です!
皆さまは就寝時、エアコンの温度は何度くらいにしていますか?わたくしは26度。風はなるべく弱くしています。エコがどうとかでは無くて、年々エアコン耐性が低くなっておるからじゃよ。


舞台は、いつとは明示されませんが書物を読むこと・自由な思想を持つ事が〔国民の為を考えて〕禁じられた世界。もちろん映画や芸術も規制対象です。
主人公はエリート焼火士のモンターグ(マイケル・B・ジョーダン)。消火では無く、一般市民の手に書物が届かないように焼いてしまう“焼火”のプロフェッショナルです。隊長ビーティ(マイケル・シャノン)に“素質アリ!”と見込まれ目をかけられています。
しかしモンターグは情報屋クラリスと関わるうちに読書の魅力に徐々に引き込まれていき…。

分かるぜ!モンターグ。おもしれぇもんな、“ハダカの美奈子”…いや、もうちょっとちゃんとした本読んでたかもしれません。ドストナントカスキーとか…。
この作品、原作は今から60年以上前に出版されていますが、今改めて映画化される背景と言えば、昨今のトランプ(やその他のファシスト)旋風だったり反知性主義の台頭だったりするのでしょう。まあ個人的には書物を禁じられる事より、政府公認の書物や報道だけが流通する方が数段怖い気がしますけどね。

…で、もう、いきなり結論を言いますが、あんまり出来は良くないような気がしました。
超管理社会に対して市井の人々がどのように感じているかが余り描かれておらず、まあその事自体は意図的なのかもしれませんが、結果どうも主人公の独り相撲感が漂ってしまってます。
脚本の出来も今ひとつに感じられます。登場人物がおんなじような事を繰り返しがちで、あんまり利口そうに見えませんし(これは狙いでは無いと思う)、そもそも主人公がどうしたいのか伝わってこないくて、…まあまあオネムでしたよ。集中するのがちょっと難しかった。
キャラクター造形もなんとなくありがちで、せっかくのダブル・マイケルの演技も、ちょっと浅めに思えてしまいました。B・ジョーダンは、このままだと“イキがった勘違いヤロウ”の役しか来なくなるぞ…。
近未来の風景やガジェットは、部分的には楽しめるのですが、何処と無くカロリーオフ版『ブレードランナー』的なチープ感が…とか書いてもしょうがない。この作品、どうやら劇場公開用では無く、“テレビ映画”として制作されているようなのですね。…たしかに、テーマ的には不特定多数に見られた方が良いのは間違いないです。一方で、予算や表現上の制約の為に見応えを犠牲にしてしまうのも本末転倒ですし、なんとも悩ましい…。ちなみに、当初はトム・ハンクス主演、フランク・ダラボン監督のハリウッド制作で進んでいた企画らしくて、……それ観テェー!!!


…しかしなんですね、普段ならもっと“炎”だ“燃える”だのワードを使って、出鱈目なレビュー書いていたと思うんですけどね、どうもダメですね。何かしら現実の悲惨な出来事などが想起されてしまった時に、単にその方面の事柄を丸ごとブロックするようにしか頭が働かない。なんとも情けない限りです…。
フィクションやユーモアはハードな現実と対峙した時にこそ効力を発揮するべきだし、そもそもそれらを生み出す創造力はハードな現実を回避する為にこそ養うべきものであるはずなのですが…。なんて残念な脳してるんだろうな、自分。ホントなんとかしなければ…。

と、言うことで、頭の中の空想のフランク・ダラボン版が☆4.8!これこそが唯一有るべき正しい『華氏451』です!!

…?なんですか?トリュフォー⁇訳の分からない事言わないでください!気味わるいなー、もう…。