焦げすーも

教誨師の焦げすーものレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
4.1
泣かせるヒューマンドラマと見せかけて、ゾッとさせるサスペンスのち、じわじわとやってくる人間讃歌であった。

小難しい解釈を徒然なるままに記す。
文字の読み書きができなかったおじいさんとのやり取りがまさに人間讃歌。
(以下ややネタバレ)
ロクでもない部分を表出させた他の5人の死刑囚と比較すると、おじいさんは真っ当すぎる圧倒的弱者、そして理想的な悔い改める者として描かれているように錯覚してしまう。
しかし、ラストシーンで観客の先入観は一気に反転させられる。彼は「教誨師」の理想通りの改心をしたわけではない。あのメッセージは、「教誨師」というシステムに刃を突きつけるかのような言葉とも取れる。
ただ、時間を置いて考えると、牧師である以前に死刑囚に寄添いその穴を見つめる覚悟で向き合った主人公にしてみれば、あのメッセージは本望であったろうと思う。”どんな人間にも生きる権利がある、人間ナメるな”という精一杯の主張をできるようになったのは、紛れもなく教誨のおかげなのだ。

確信犯的大量殺人者の若者も印象的。明らかに津久井やまゆり園の障がい者大量殺傷事件をモデルにしている。死刑を肯定してしまうと彼の理屈に屈することになる、しかし、「教誨師」システムは死刑を前提としているという矛盾。モヤモヤする部分もあるが、主人公はその矛盾に正面から向き合っていたと思う。

予期せぬイベントして、監督とライターのトークが上映終了後に行われた。興味深かったのは、主人公の境遇は大杉漣さんの生き写しであったことだ。幼少期の川原は大杉さんの故郷の徳島ロケ、サッカー大好き。大杉さんの朴訥な語り口がもう聞けなくなると思うと悲しすぎる。。
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