焦げすーも

なぜ君は総理大臣になれないのかの焦げすーものレビュー・感想・評価

4.2
私の地元うどん県選出の国会議員を10年以上追ったドキュメンタリー。

映画鑑賞後に一番強く思ったことは、我々は政治家に対して、迷いや葛藤のなさを過度に求めてしまっているのではないかということである。
被写体である小川淳也代議士は、迷い・戸惑い・不安な顔を隠さない。選挙の出だしの演説前に泣きそうな顔さえ見せてしまう。

印象的だったのは、民進党分裂時の選挙で、"無所属という選択はカッコいいし、葛藤がない。(だが・・)”と呟く車中インタビューでの発言だ。無所属であれば、選挙活動に制約は出るが、浮動票の支持を得られるかもしれない。しかし、当選しても影響力を発揮できる確率は下がる...と大いに葛藤する。

迷いや葛藤を表に出さず、断言・決断できる「強さ」を最大限に演出できること。
これは、トップに立つ、もしくはそれ狙う政治家としては必須の能力なのかもしれない。少なくとも劇場型政治に於いては。小泉然り、橋下徹然り、あるいは小池百合子もそうかもしれない。

しかし、本当に迷いや葛藤といった本心を隠して自らをアピールすることが本当に重要なのか?迷いや葛藤を切り捨てた結果、あの時の小池百合子のように「排除」というワードが表出するのではないか?少なくとも自分は、同じ議員間で排除というワードを使うことで「強さ」をアピールするような政治家は信用に値しないと改めて感じた。

小川議員がその時の選挙でアピールしたのは、「政党は変わっても自分の本質は変わらない」ということ。映画のストーリーが進むたびに、この人であれば初志貫徹してくれるだろうと自然と思わせるような彼の実直な人柄が滲み出てくるのを感じた。
その反面、小川議員が選挙でアピールしたかったのは、地道に生活している国民に対して何ができるのかといった具体的政策だったろうに・・・ということも同時に感じた。


(おまけ)
うどん県出身者としては、小川議員のほとんど空っぽの冷蔵庫に、うどん用の鎌田のだし醤油が入っていたことに爆笑した。ただ、劇場で受けていたのは自分だけだったようだ。
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