焦げすーも

イップ・マン 完結の焦げすーものレビュー・感想・評価

イップ・マン 完結(2019年製作の映画)
4.0
過去作であれだけ歳を取らなかったドニー兄貴が、冒頭のシーンで一気に老け込んでいたことが最初の強烈なジャブ。
チャイナタウン中華総会の代表との会合での巨大丸テーブル皿大破壊で、カンフー世界にどっぷり浸かった状態に。2作目のサモハンキンポーとのバトルを想起。物理的に無茶苦茶なのだが、カンフーなんだからなんでもありなのだ。

不公正に権力を使い、人種を平等に扱おうとしない外国人への闘争というテーマは、1作目から変わらず通底している。
さらに、過去作を含めた敵役の共通点として、偏見に凝り固まっているものの、闘いにおいては卑怯なことをせず一対一の勝負をするというところが良い。

過去作との違いは、クライマックスで敵役を叩きのめしたところで、爽快感があまり感じられなかったところ。虚しささえ感じられた。
それは、イップマン自身が勝利により空手よりもカンフーの方が強いことを示したかったわけではないからだ。彼が示したかったのは不公正な扱いに屈服しないことその一点のみ。
カンフーを広めることで、平和的に華人への偏見を減らすことがもともとの彼の望みであったが、勝利なしに絶対に偏見や不公正を正すことができないという状況が見ていて苦しかった。

3作目に続き、良質な家族ドラマでもある。特に息子が木人を打っているシーンが心に残った。息子に真っ直ぐに向き合うことのできなかった主人公が考えを変える様は、なんだかロッキーシリーズに近いものを感じた。
焦げすーも

焦げすーも