吉田コウヘイ

クレアのカメラの吉田コウヘイのレビュー・感想・評価

クレアのカメラ(2017年製作の映画)
5.0
「写真を撮ると、その人が別人になるの」
アンドレ・バザンを思わせるこのセリフの通り、イザベル・ユペール演じるクレアのインスタント・カメラで撮られた主人公たちのストーリーが鮮やかに変容していく。
映画祭開催中のカンヌを舞台に、犬や沖の浮きを栞にして描かれるその様は複雑ながらとても軽やかで、少しほろ苦い。

「ELLE」のイザベル・ユペールと「お嬢さん」のキム・ミニ。それぞれの主演作でカンヌに来ていた世界的女優の共演。なんとたった8日間ですべてが撮られたという「クレアのカメラ」はしかし、いやだからこそホン・サンスの本質が詰まったー映画中のセリフを借りれば「映画に対して素直になれた」ー作品になったのかもしれない。

ホン・サンスとユペール、そして海辺の街といえば「3人のアンヌ」があるが、今作ではそこに加わったキム・ミニがユペールと見事に渡り合う。それにホン・サンスは目一杯の愛情を持って応えた。白い光が射す窓辺でタバコを吸う後ろ姿の美しさ!