ベルサイユ製麺

フランキー 不完全な男のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

フランキー 不完全な男(2017年製作の映画)
2.8
並木道をまるで“世界の全てを手に入れた”みたいな翳りのない笑顔で歩く若いカップル達。
電車の中でギャン泣きの赤ちゃんと素知らぬふりでソシャゲに没頭するそのヤンママ。
歩きタバコのお父さん。

☘…どうした事か。最近どんな光景を目にしてもも心が波立たない…。それどころか、「分かる、分かる、そうだよね…」とばかりに目を細め、皆の幸せを祈るようなポジティブなオーラを発してしまっている…。春だから?紅茶味のアイスが美味しすぎるから?日向ぼっこの野良猫がポテポテ歩きがちだから?

☠️遺憾!!コレでは遺憾の!こんなん自分じゃない。圧倒的に心に足りない!そう、“ヤサグレ”が!!!!
急遽TSUTAYAに直行、ヤサグレ注入出来そうな作品をサーチしたさぁね!空色、茜色のジャケは無視だ、黒字に赤とか金が良いぜ!野蛮で孤独な男が、カップルに、ヤンママに、煙たいオッサンに一撃カチ食らわすような怒りに満ちたジャケットは………発見、ハイこれぇー!!!!!

『フランキー』
良い!名前だけの潔さ。邦画で、トンカチ持った男のジャケで『義治』とかだけ書いてあったら絶対怖いもん。フランキー、君に決めた!!

…オープニング、分かりやすく不穏な劇伴に合わせ映し出される酒瓶、割れたグラス、血飛沫の散った紙幣、なんかのハズレ券(期限切れのガバス⁇)…うむ。良いヤサグレが出ておる。
ブロンドと絡んでいるのがフランク。中途半端なタトゥー、キッチンたわしみたいな未処理の胸毛、そしてなんとも形容のし難い顔…。トータルでの印象は、一度試したきり二度とは買わない隙間狙いのカップラーメンと言った感じか。
さっき絡んでたブロンドは奥さん。それなりの家に住み、ぱっと見に大きな問題を抱えているようには感じられない。NOヤサグレ。しかしこう見えてどうやら過去は随分荒んでいたようで、その為家族とは連絡が取れないでいる。意を決して父に会いに行くも父は目も合わさずスーンとしている。酒も辞めたし真面目に働いてるのに…。
フランク氏、ストレスを受けるたびに聞こえが悪くなりキーンと耳鳴りがします。…分かる。吾輩も仕事中は飛行場に居るんじゃないかと思うことがしばしば。内的なヤサグレがムクムクしてきますよ。

以降の展開→馴染みのダチに付き合わされ、なんかの取引に同席する事になるが、そこにワル時代のボスが現れる。ボスとその部下のチンピラと気まずそうに無難な挨拶をしてると、黒人プッシャー2人組登場。何故か元ボスが彼らを射殺!えー!っとなりながら闘争。→フランクは悩んだ挙句、検事(?)に電話で通報。ところが検事はどうやら元ボスと裏で通じていたらしく、彼の怒りを買い奥さんをさらわれてしまう。フランクは仕返しに元ボスの娘をさらう。

…別段面白くは無いですが、そんなに悪くは無いかな?バタバタ場当たり的な行動は変なリアリティと迫力を生んでいると言えなくも無いし、舞台がデトロイトだのブロンクスだのじゃない、閑静な住宅街なのも良い。普通の街にこそ狂気が宿っているものです。suburban madnessです!スマホ持って街を全力疾走するフランク、マジのマジモンに見えます。マジモン・ユニバースですぜ!!いいぜ、いいぜ⁈
☠️さあさあいよいよヤサグレてまいりましたよ、と揉み手をして内なるバイオレンスのバックドラフトに向けて待機していたのだ!が!
…この作品、この後信じられない失速を見せます!完全にピタっと話が止まるので、口から入れ歯だけ飛んでって画面に刺さるかと思いましたよ…。
前半1時間くらいは動きがあって、30分くらい何も起こらず、ラスト数分で結末…。間の30分は正真正銘不要、虚無です。映画を見れば見るほど強くなる映画拳のお師匠に今作を見せるとブーッと吹いて「こりゃ虚無じゃ」と叱られます!(←このくだりも虚無)
映画の中に洗濯物干したり掃除機かけたりする時間を確保しといてくれるのは親切と言えなくも無いけど、まあ想像するに65分とかの映画はかっこよく無いと思って無理に引き伸ばした結果、無茶苦茶見応えの無い作品になったのかと。(↑このレビューもな)
因みに💀メーターは0.3。…暴力描写ほぼ見せない。優しい。いや、予算無いだけか。

今作は、どんな映画でも楽しめるタイプの人以外には正直全くおススメ出来ませんが、個人的にはその面白くなさのお陰で充分ヤサグレた気持ちを取り戻せたので、大満足です!みんな×ね!!fuckfuckfuckfuckfuck…