※Filmarksオンライン試写会にて鑑賞
一見すると冷徹なビジネスモデルに身を置く人間であっても、その実は強力かつ純粋な動機の基で行動していたりする。
そういった見え辛い熱意を、あらゆる角度から描いた映画である。
駆け引きと裏切りの連続による痛快なストーリー性の根底に、『面白い』を本気で探求する人間の姿を多角的に映し出す事で、意表を突く展開とは裏腹に純度の高いテーマが浮かび上がってくる。
そういった熱量をビジネス的側面から描くからこそ、そこにだけは嘘がない事が立証され、よりテーマを引き締める。
冒頭のカットバックから葬式のシーンが終わるまでの導入で行われる「誰が誰に影響を受け、振り回されているか」を示唆的に描く丁寧さが象徴するように、キャラクターの熱意と理性を的確にコントロールする制球力無くしては、こういった「変化球のような直球」のストーリーは生まれ得ない。
作家側、読者側の心理や本質を編集者側から見抜いていく描写も含め、これを観た観客……とりわけ作家志望や創作への熱意ある人間にとっては、必ず掻き立てられるものがあるだろう。
創作の動機やチャンスの理由は一旦脇に置いて、どこまで自分にとっての『面白い』を追求出来るか。
その探究心同士の衝突による摩擦熱は、スクリーンを超えて観る者に伝わるはずだ。