三樹夫

バーニング 劇場版の三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

主人公はグレートハンガー、つまり人生に飢えていて、自分が何者か分からず、何のために生きているのか分からない。大学を卒業してプラプラしており(大卒でも仕事がないという状況もあるだろうが)、一応小説家だが小説を書くことができない。なんで小説を書くことができないかというと、だって空っぽだもん。
主人公のDT感が凄くて(実際ヘミに抱かれるまでDTだったし)、ベンの外車と自分のボロボロの軽トラを見比べて気後れしちゃって、ベンに送ってもらえばいいじゃんと卑屈な態度。ベンの高級マンションに行った時も、ヘミにトイレがどこにあるか訊いていたが、その真意はヘミはベンと付き合ってんじゃないのか、ベンの部屋に来たことがあるのかを探ろうという、DTのこじらせっぷり。ヘミに人前で裸になるのはどうかと思うと、一回セックスしたぐらいで彼氏面。小説が書けないっていうけど、こういった金持ちのボンボンと見比べて気後れして卑屈な態度とるとか、質問で探りを入れるDTこじらせな自分のことを小説にすればいんだよ。そういったことが作品となるということは、まさにこの映画自体が証明している。ラストでベンを刺して、服を全部脱いだのは生まれ変わりを意味しているのだろう。
ベンというのは、料理の話がベンという人間を表している。自分で完全にコントロールできるから料理が好きで、最後にそれを食べるのが好き、というのが、他人を自分の思いのままに操り最後に殺すというベンの自己紹介でもある。
ベンというのは空虚な男で、取り巻き連中の話にあくびかます、人生に飽きているかのような男。人を殺すことによって生きている実感を確かめられるように思える。『桐島、部活やめるってよ』のひろきが行くとこまで行ってしまったかのような人物だ。

この映画はどこからどこまでが現実で幻想かはっきりしていない。俺は一応ヘミを殺したのはベンで、ベンでビニールハウスを焼くというのは人を殺すこと、そして実際に殺しているという様にとっているが、本当のところはどうなのか分からない。そもそも冒頭の時点で、ヘミが主人公が抽選に当たることが初めから分かっているような顔をしているなど、現実と幻想の境目が凄く曖昧である。そして、ベンがヘミを殺したのかというサスペンスにそれほど力点が置かれていない。
間をたっぷりとっていて、例えば葬式みたいなのが終わったベンが親類と一緒に食事を取っているシーンが長々続くなど、時間の流れがゆったりしている。
観終わった後に、主人公が『ベテラン』のクズ御曹司と同じ役者ということを知った。ボンクラ感を、常に口を半開きという演技で表現している。
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