ひでやん

ジュディ 虹の彼方にのひでやんのレビュー・感想・評価

ジュディ 虹の彼方に(2019年製作の映画)
3.6
波乱に満ちたミュージカル女優の伝記。

『オズの魔法使』から30年後、子供たちとの生活を守るためにロンドンのステージに立ったジュディ・ガーランド。彼女の晩年は苦悩の日々だったんだな。不安定な精神状態でボロボロになっていく彼女の姿を見るのが辛かった。

食事制限、投薬コントロール、すべての行動を管理された少女時代。そして薬物中毒、アルコール依存、不眠症、5回の結婚。47歳の若さで急逝…。そんな波乱万丈な人生を今作で初めて知ったが、おとぎの国の裏側は知らない方が良かったかも。ドロシーのキラキラした瞳は、薬による「覚醒」だったのかもしれない。

スターの座と引き換えに削られた心と精神。MGM時代の薬物が彼女を苦しめ続けるのは悲しくて痛ましい。過去の栄光にしがみつくというより幸せにしがみつく彼女。スターという自覚はあるが、おごりではなく自負。我儘そうに見えるが優しくて、強そうに見えるが孤独で脆いひとりの女。不安定な精神状態でもいざステージに立つと圧巻のパフォーマンスを見せる彼女は、周囲の人たちを振り回しても嫌いにはなれなかった。

同性愛カップルの男性ファンとの交流は心温まるシーンだった。LGBTの社会運動を象徴するレインボーフラッグは「虹の彼方に」が由来だという。その「Over The Rainbow」はグッときた。ドロシーは、虹の向こう側にある夢の世界を歌っていたが、ジュディが歌うと、降りしきる雨の向こうにある虹を待っているように思えた。
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