ひでやん

イメージの本のひでやんのレビュー・感想・評価

イメージの本(2018年製作の映画)
4.0
脳内がヒリヒリするアート体験。

「5本の指があって、指が合わさると手ができて、そして人間の真の条件とは手で考えることだ」というゴダール自身のナレーションで始まり、5本の指のごとく5章で構成されて「手」と成る物語が展開。

物語と言っても筋はなく、ゴダールが到達した今作はもはや「映画」という体を成さない。様々な絵画、映画、文章、音楽をコラージュした人類のアーカイブに加え、新たに撮影した映像が洪水のように流れる。タイトル通りまさに「イメージの本」で、見るものの感情や思考などお構いなしにゴダールはページを捲る。

1シーン、1ショットが1ページとして投影され、ビビッドな色彩や劣化してざらついた映像が次々と通り過ぎてゆく。まるで絵の具のように映像が重なり、溶け合い、打ち消し、出現する。「1秒の歴史を作るには1日かかる」という語りが入り、映画史や人類史が数秒の切り替わりで映し出され、情報量の多さにちょっと頭痛。

怒りだ。悪が滅びるまで続く人類の蛮行、愚行に対するゴダールの怒りが全編に渡り溢れる。様々な暴力の中に時折挿入される愛のページ。その刹那の映像に思うは醜くも美しい世界。このホシで人類が歩んだ歴史を嘆きつつ、素晴らしき世界であると、そう思いたい。

「希望は生き続ける」咳をしながらゴダールが語るその声は、未来に向けた熱い想いだった。
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