mura

夜明けのmuraのレビュー・感想・評価

夜明け(2019年製作の映画)
4.0
久しぶりに柳楽優弥に繊細な役柄が与えられたような。ここのところ勇ましい印象しかなかったので。是枝裕和の協力を得た作品で、なるほどなと。この柳楽優弥と、相対する小林薫がいい。

話は川から始まる。川岸に倒れた青年を助け、家に連れて帰った哲郎。青年は「ヨシダシンイチ」と名乗り、哲郎はそのまま逗留することを勧める。そして経営する木工所で働かせる。実は哲郎には事故で死んだ「真一」という息子がいた。シンイチも父親との関係悪化により家を飛び出していて、ふたりは関係を強めていく。しかしシンイチは「シンイチ」ではなく、その地に忘れられない過去を抱えていて…

なぜこの不穏な異分子を受け入れるのか、当初はその理由が見えず、緊張感が漂う。そこに理由が少しずつわかっていき、あわせるようにふたりが少しずつ心を開いていく。この過程がいいと思った。髪を染めるところなんてとくに。

冒頭、「シンイチ」は夜が明ける前の川のほとりに立つ。そして最後、「釣りをしたことがない」海にたどり着く。夜明け前から始まり、最後にようやく夜が明けるんだと。

哲郎に会ったとき「シンイチ」は、「自分探しの旅をしていた」とうそぶく。けれども、結果的には本当に「自分探しの旅」となる。
mura

mura