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タロウのバカのmuraのレビュー・感想・評価

タロウのバカ(2019年製作の映画)
4.3
『人間失格』の翌日に見た。あちらでは感じ得なかった背徳感のようなものを、こちらでは強く感じた。これこそ「人間失格」かと。で、やっぱりこちらに惹かれる。

高校生のエイジとスギオ。ふたりと行動をともにするのは年少のタロウ。「ヨシズミ」との名前はあるが、名前を名乗らなかったのでふたりからは「タロウ」と呼ばれる。そして学校には通ったことがない。3人は半グレのヨシオカを襲い、バッグを奪う。そのなかに入っていたのは拳銃。3人は拳銃を得て興奮するが、同時に半グレグループに追われることになる。そして拳銃が3人の運命を変えていく…

拳銃を手にすることで運命が変わっていくという話はこれまでもあったが、この映画が特徴的なのは手にした人間が無邪気だということ。これがどうも怖い。

実際、無邪気とも思える言動から突如として暴力が生まれる。閉塞感のなかで、次から次へと暴力に手を染める。でも、どこかで終わりが来ることにも気づいている。そこが切ない。

飛びたい。でも飛ぶと、落ちるときに死ぬ。それでも飛ぶ。…って感じで。

それにしても、このタロウの存在感がすごい。菅田将暉も太賀も脇にやって。さらに知的障害者も配役し、キャスティングにとにかく驚く。

さらにワンカットが長い長い。そのなかで突然に暴力があらわれ、気持ちが落ち着くことがない。

『日日是好日』と同じ監督が作ったとは思えない。この背徳感は…『ゲルマニウムの夜』を思い出した。
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