鈴峰らんか

Diner ダイナーの鈴峰らんかのレビュー・感想・評価

Diner ダイナー(2019年製作の映画)
1.5
先に原作を読んでしまったので、一言で表すなら「解釈違い」。
作り手と私じゃ物語の受け止め方が違ったみたい。
殺し屋専用の食堂が舞台で、食事を摂るという当たり前の行為と殺し合いとの非日常感が対比になると思っていたのに。
原作どおりに作れば名作になるとは思わないけど、原作のテーマの中心になる異様な世界で出会った男女の友情・師弟愛・過去の乗り越え方の部分をごっそり安っぽいラブストーリーにされたのは観るに堪えない。女ウケ狙いなのかな?
そもそも、殺し屋専用の食堂で働くことを受け入れることもそうだし、生き延びるために酒瓶を隠すなんて手段をとる時点でカナコ(玉城ティナ)はそんなに弱くもバカな女でもないと思う。にもかかわらず、この作品ではまるっきり弱い怯えるだけの女になってしまっていたのが残念。弱い女がひたすら怯えてイケメンに守ってもらう話は別の作品でとことんやってほしかった。
原作ではなぜカナコが妙に肝の据わった女なのか明かされるが、そこが抜け落ちている。これではカナコはただの海外旅行してみたいという浅はかな考えだけで危ないバイトに手を出したバカ女だ。「バカ女がバカやってバカみたいな目に遭ったけどイケメンがいたから助けてくれた話」になってしまっている。
中島貞夫の極妻を観たとき、「これは男が想像する女だな」と思った。たぶん女の腹の中まで想像して、監督が一回心のブラジャー着けて撮った女じゃないと思う。あくまでも記号的な女になってしまっているのを見てがっかりした。(あれは女優とシリーズの力もあるから比べるのは違う気もするけど…)それと同じようなものを感じる。設定はあるんだけど、その時間だけ存在してるようで過去も未来もないキャラクターのよう。わかりやすく言うなら「オリキャラのイメコスです☆いいね&RTお願いします!@蜷川実花」だ。現実離れしすぎている殺し屋たちの見た目からは食事する姿なんて想像できない。サプリ飲んで生きてそう。もちろん暴力との対比なんて生まれるわけもない。キャラビジュアルだけなら優勝。銃撃戦のシーンはせっかく派手な動きがあっても映像がぐるぐるしてるだけで何ひとつかっこよくは映っていなかった。撮りたいものとそうじゃないものがはっきりしすぎている。
正直予告だけで十分だった。静止画として完璧なものが動画でも完璧ということはないんだなと思わされた。
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